冬と春

第1話 冬と春

「よっ!雪じゃん!」

「あ、ああ!瑛太くん」

「学校まで一緒に行こうぜ」

連日の雪がようやく収まったころの

学校までの堤防道

「う、うん…今日あの子いないんだ、付き合ってるんじゃ。」

「ん?あいつ?ただの友達だよ、なんとなく一緒に行ってるだけ。今日体調悪いんだってよ」

どうでもいいな

「へえ…じゃあその子が治るまで一緒に登校しよ…寂しいでしょ」

どうでも…

「…しょうがねえなぁ。昔から世話焼きなやつぅ」

「へへ…そう?」

「昔からそうだろー自覚ねえの?」

どうでもいいよ

友達らしいから

大丈夫だよ




「今日もあいつ体調悪いんだってよ…心配だな」

「そうだね…風邪かな」

「咳がひどいとかなんとか…」

「へえ…」

「あ!そうだあいつさあ…



大丈夫だよ



「雪さあ…覚えてるか?3人で遊んでた時の」

「ああ、楽しかったね」

「また、遊ぼうぜ、大人になったら3人で酒でも飲んでさー」

もう未来を見据えてるんだね

「卒業したら何しようかな」

「俺は…働くかなぁ」

「なんで?」

「…自由に使える金が欲しい。」

「もうちょっと我慢しなよ」

「ええー」

「大学行ってさ、頑張ったら、自由に使えるお金、増えるよ…たぶん」

「それもそうか…一理あるぜ…」

あの子は働くはず

お父さんが居ないんだって

だから

大丈夫





「ああ!桜の芽…咲きかけてね?」

「ほんと!綺麗だろうなぁ」

しばらく芽を見つめてる


「俺さ、桜がさ好きなんだよね」

「えっ…ああ、そうなんだ」

「ん?……いやいや違うぞ!」

「分かってるって勘違いだよ」

間があったから

ほら、大丈夫




「いやー!やっと治ったのかよー!」

「…治ってよかったね、

桜ちゃん」

「うん!心配かけちゃったあ、雪ちゃんもありがとぉ!」

「うん…大丈夫」

「てことでーこれから3人で登校しまーす!」

調子いいなあ…

「あはは!あの頃思い出すねぇ」

だから何よ

「…そうだね」

「ああ!桜ー!咲いてる!!」

「ほんとじゃぁん!」

「写真とろーぜ!」

元気そうじゃん

良かったじゃん





「あったかくなってきたなぁ」

「もう卒業だってねぇ…」

「悲しいね」

嘘でしょ

「でもさ!



俺たちずっと!




友達!!























「よっ!久しぶり!雪!」

「うん…久しぶり」

「元気してたぁー雪ちゃん!」

「元気だよ」

おめでとうって言わなきゃ

大丈夫だった

のになぁ…

「うぅ…」

「…泣いてんの?なんでー!相談乗ってやるからさ!」

「ごめん、ごめん…」

「大丈夫だよぉ!雪ちゃん」

「大丈夫ね…」

「ほら、今日はぱっと!飲もうぜ!」

「うん…」







「瑛太ってばねぇー…」

「ぐかぁーー!」

「うわあ」

「あのクソ上司さあ!!」

「はいはい!大丈夫だよ!」

「最悪だぜー…」

「あいつ特にさあ!!…」


「瑛太さ、酔うと口悪いのよねぇ」

「…大丈夫なの?」

「何が?」

「いや、口悪いんだったらさ…」

「うーん、でも正しいことで怒るんだー」


「だからさ…こういうところも含めて私は瑛太が好きなんだぁ。」

「私も…正しく怒るのは、いいと思うな」

「でしょおー!やいやい瑛太ー!いい男ー」

「…やかぁしぃ」


「またさ!3人…4人?で一緒にどこか行こ!」

「5人でもいいぞぉー」

「ええ!?あ!雪ちゃんのいつかの王子様とね!ねっ!」

「ふふっ…王子様…」

桜の枝に被った雪

春の暖かさに溶かされて

春だな

「じゃあね!」

「うん…



あの!!」

「なあに!」






「おめでとう!!」




ten

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

冬と春 @tensuke0628

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ