七色の短編

misaka

○○色

 今回は「色」がお題ということで、日本の七色(赤・橙・黄・緑・青・藍・紫)をイメージカラーとした1話100文字の短編集にしてみました。いかんせん、短くお話をまとめるのが苦手でして……。また、言葉を使って物語の雰囲気を作り出すことも課題だと思っています。それら2つの執筆の練習も兼ねて、今回、このような試みに挑戦してみることにしました。


 なお、以下の短編はとある法則で並んでいます。どのお話がどの色に該当するのか。法則性についても、ぜひ予想しながら楽しんでみて下さい。どれか1つでも読者の皆様に私の思う“色”が伝わっていれば良いのですが……。(※個人的に一番難しかったのは、藍色でした!)






 足りない。足りない、足りない……。もっと、もっと、もっと! 誰もいない、1人きりの部屋で。心の赴くまま、僕は思索に耽る。自分は誰で、何者なのか。僕は、ボクは、ぼくは……。僕は“自分”へと、深く潜る――。




 高く、遠く、私は光へ向けて手を伸ばす。届かないことは分かっている。でも、下を向くよりはずっとマシ。前を向いて、何度でも足を踏み出して、いつか、きっと。伸ばした手を握ってみせる。風が、髪を静かに撫でた。




 生まれたての小さな手が、指先をぎゅっと握ってくる。一見した時は、今にも消えてしまいそうなほどに儚い存在だった。けれども、いま、指先から伝わってくるのは、ただ懸命に生きようとする、力強い命の鼓動だった。




 憧れ。尊敬。好意……。先輩に向けた私の気持ちが、果たしてどれなのかは分からないけれど。それでも懸命にコートを走ってボールを追う先輩の姿は、あまりにも眩しくて。その輝きに向けて、私は目一杯の声で叫んだ。




 幼馴染と歩く河川敷。俺もコイツも、お互いの目に悔し涙が浮かんでいることなどとうの昔に知っている。だから2人して、顔を見られないように下を向いて歩く。視線の先には、長く伸びる影と、水滴の跡が落ちていた。




 しとどに濡れた石。さかさまの世界が水滴に映る。太陽の光が霧によって拡散され、幻想的な光景が広がる。濃密な土の匂い。聞こえてくるのは川のせせらぎ。鳥の声。動物たちの、話し声。静かに眠る、未知たちの寝息。




 薄暗い、小ぢんまりとした部屋で、煙草の煙が揺れている。煙草のにおいに混じって立ち込める、香水の匂い。互いの耳元で囁かれるのは、甘い言葉。氷の入ったグラスが音を立てる。2人だけの夜は、まだまだ続く――。

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七色の短編 misaka @misakaqda

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