第5話 俺たちは宇宙人の正体を見る/私が見た夢①
俺は呆然としている嶋森に手を貸すと、一緒に立ち上がった。周囲に飛び散っているガラス片を避けながら、柚木崎のもとに駆け寄る。
「怪我とかはないですか」
「ああ、俺は大丈夫だ」
「私も大丈夫です。……びっくりしましたけど」
「とっさの行動とはいえ、本当にすまなかった」
「いやいや、謝らなくても大丈夫ですよ」
「……何があったのかはあとでじっくり聞かせてくださいねっ」
目を輝かせている柚木崎から視線をそらし、俺は割れた窓を見る。
一瞬の出来事だったけれど、改めて見てみれば何が起きたのかは一目瞭然だった。
床に散らばったガラス片。聞こえてくる怒鳴り声。そして、転がっている野球ボール。
過ぎてみれば簡単なものだ。おそらく野球部が特大ホームランを打ち、その球が窓ガラスに激突したのだろう。
野球ボールは白いし、太陽光を反射したのかもしれない。そもそもが眩しかった上にこの小ささだと、はっきり視認することができなかったのも無理はない。
宇宙人の正体見たり枯れ尾花……ってところか。
「……案外終わってみればあっさりとした出来事でしたね」
「ああ。まあ未来を当ててはいたから、今回の夢は予知夢だったと言えるな」
「それはそうですね」
柚木崎と軽く言葉を交わしていると、隣で嶋森が額に手を当てていることに気がついた。まだ嶋森の顔には朱が指していて、目も焦点があっているように見えない。
どっと不安になり、俺は嶋森に声をかけた。
「どうした? やっぱりころんだときに打ちつけたとか……」
「そ、そんなんじゃないので! 本当に、大丈夫です!」
「お、おう……」
慌てたようにパタパタと嶋森は手を降った。一体なぜそんなに動揺しているのだろうか。
宇宙人以上にわからない問題だった。
「さて。それじゃあこのことを宮田先生に報告だけして、俺たちは帰ろうか」
「ですね」
「りょーかいです……って先輩たち、逃げないでくださいよ? まだまだ私の中では未解決事件だらけなんですから!」
「……嶋森、ちょっと俺早く帰ろうと思うんだけど」
「奇遇ですね。私もぜひそうしたいと思っていました」
「あ! こらぁ!」
即座に意思疎通し走り出した俺たちを、一足遅れた柚木崎が追いかけてくる。廊下に三人分の駆ける音が響いた。俺と嶋森が部室につくのが先か、柚木崎が追いつくのが先か。
どちらにせよ、これは長くなるだろうなぁ……。
いずれ訪れる面倒な事態を思い浮かべ、俺は苦笑をこぼした。
◇
自宅の寝室。時計はそろそろ就寝の時間であることを示しています。
ですが私はベットで横にならずに、座ってぼーと今日のことを思い返しながら、落ち着かない心を鎮めようとしていました。
だってそうでしょう? もしかしたらとんでもない未来を予知してしまうかもしれないんですから。
しかも予知夢の正確さといえば……当の私が痛いほどわかっています。そのおかげで助かったことも何度かありますけど、やっぱり寝る前の時間は緊張します。
なので私はいつもナイトルーティンとして、その日の出来事を振り返っていました。授業の復習になることもありますし、忘れてしまっていたことを思い出したりすることもあるので、かなり重宝している大切な時間です。
……………………。
ですが、こと今日に限っては、考えれば考えるほど眠れなくなりそうでした。
小テスト。宇宙人。物置部屋。……有坂くんに、押し倒されたこと。
うわああああ……。いくらなんでも刺激が強すぎです。寝かせる気ないんですか!? 夢のくせに!
今日だけで何度夢に感謝して、何度夢を恨んだでしょうか。まあ、おかしな夢を見るのも、おかしな言動を有坂くんに見られるのも、夢の内容を有坂くんに教えるのも、よくあることなのですが。
ですが! 有坂くんに押し倒される未来を教えてくれなかったことは根に持ちます。至近距離で見られるとわかっていたらもっと色々準備したのに……。メイクとか……言動とか……。少なくともびっくりして何も言えなくなる事態は回避できました!
うぅ……。次も似たようなことがあったらどうしましょう……。
今度こそ、予知夢で前もって知らせてくれるといいのですが。
(あとがき)
『夢は絶対じゃないんだよ、嶋森』を読んでくださっている皆さん、いつもありがとうございます!
宇宙人の夢についての話は、ここで終わりとなります。ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!
区切りがついたところで、この場を借り、今後のことについてお話したいと思います。
今後の更新についてですが、私生活との兼ね合いもあり、二日に一回とさせていただきます。なので次の更新は1/9(木)となります。
今のところエタるつもりはないです! 遅くなりますがお待ちいただけると幸いです。
何卒よろしくお願いします。
夢は絶対じゃないんだよ、嶋森 夜野十字 @hoshikuzu_writer
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