第2話 異世界では、油断する方が悪い。
彼らは、保存食だろう。干し肉を、湯に放り込み、ふやかして囓っていた。
個人個人で用意して、予備はないらしい。
俺は一緒にいることもないので、さっきの小屋へと戻る。
横になると寝てしまうので、椅子に座る。
そう、途中で、彼らが品定めをしているのに気がついた。
着ているスーツ。
彼らが着ているのは、羊毛か、木綿かはわからないが、生地がかなりごつく、縫製も荒い。
適当なパッチ当ての修復が目だつ。
そして俺のことだ。かなり気になるだろうに、何も聞いてこない。
ならば、やることは一つ。
俺を殺して奪えば良い。
そんな事をきっと、思いついたのだろう。
まあ、感情を隠すのが下手で、見え見えだ。
杞憂。俺の考えすぎなのであれば、それはそれで良い。
だが、ドアが開かれようとする音。だが開かない。
さっき、隙間にいくつかの木片を差し込んだ。
外開きの扉は面倒だ。
引き戸なら、つっかえ棒ですんだのに。
話し声が聞こえる。
「開かねえぞ、どうする?」
「かまわねえ。どうせやるんだろ」
「だが傷を付けたら、値が下がるぞ」
「頭か、首を狙え」
「そうか、そうだな」
ドアのひだり横に立ち、フルスイングの準備をする。
静かにするのは諦めたのか、勢いよくドアが開き、飛び込んでくる。
すでにスイング中だが、剣が抜かれているのが見える。
「ビンゴ」
ぐしゃっと言う感触と、吹っ飛ぶ相手。
誰だったかは、暗くて見えない。
「うわっ。どうした」
そういった、男の頭に鋤を振り下ろす。
「がっ」
当然、出て行きはしない。
「ちくしょう。やられている」
そんな声がする。
「だから、やめようって言ったのに」
女の子は反対したのか。
「もうおせえ。行くぞ」
同じパターン。外よりも中の方が暗い。
そして彼らは、ずっと魔物除けに火をたいていた。
こっちは暗闇で目を慣らしていた。
その違いは大きい。
丁度眉間の辺りにヒットする。
吹っ飛んでいく男。
入れ替わりに入ってくる女の子。どっちかはわからないが、再びフルスイング。
「ぎゃっ」
そんな声を出して倒れる。
少しして痙攣が治まる。
あと一人は何処だ?
そっと外を覗く。
悠長に火に当たって待っているようだ。
キーホルダーに付いている、小型ライトを手に持ち、近付いていく。
「殺しちゃった?」
「多分な。君はどうするんだ?」
「どうもしないわ。イラーダが、女二人だと物騒だからと言って、あいつらと連んでいただけだし。彼女が死んだのは少し悲しいけれど」
「そりゃ悪かったが、彼女も剣を抜いていた。俺は殺されるのは嫌いなんだ」
そう言うと、彼女が噴き出す。
「変わった人。ねえ。あなたのこと教えてくれない?」
彼女は、信用できるかもしれない。
なぜかそう思った。
それから、朝になり。
奴らの身ぐるみを剥いで、服や装備を回収をする。
自分でやったことだが、気分が悪くなる。
村の外れに穴掘り、放り込む。
ゴブリン達と一緒に。
討伐の証明は、何でも良いが、同じパーツを持っていくこと。
耳なら、右耳だけを集めるし、右手なら右手のみ。
きちんと数が分かる様に。
彼女は、もっと上かと思ったが、二二歳くらい。
気に入る男がいなくて、だれとも付き合ったことがないらしい。
そして彼女の案内でギルドへ行き、登録をする。
身分証を作れたので、売れるものを売りに行き、古着を買い込む。
かなりゴワゴワ。デリケートな俺の肌は、スリ傷になりそうだ。
「サイズが無いわね」
「仕方が無い、大きめのものを買って、継ぎ合わそう」
それから三年。
まだ彼女は横にいる。
幾度か人に騙され、殺されそうになり、謎の能力が生えた。
色により、相手が信用できるかわかる。
彼女はずっと薄いブルー。
何か考えている奴は、警告なのか赤。
怖いのは、大概の奴が赤なんだよ。この世界。
気を抜けば、すぐに後ろから刺される。
お影で、たばこ。いや、今は葉巻だな。やめられなくって困っている。
KAC20247 異世界生活も世知辛い 久遠 れんり @recmiya
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