山田です。あなたを潰します。

空【くう】

以下は、埼玉県▓▓▓▓▓▓▓▓市▓▓▓▓村に住んでいた。Aさん(21歳)の実際のインタビュー内容です。


そうですね…あれは14歳の夏頃の話です。その頃から私の村では、空に連れてかれるように人が昇っていくようになりました。

元々少ない人口が少ない村からどんどん人が減っていくと困ったものですが、そうとも限らなかったんですよ。

その日からというものの豊作豊作で、ねぎ、にんじん、さといも、時期関係なく色んな作物が育つようになったんですよ。

みんなこれを神様のおかげだおかげだなんて言っちゃって。まるで昇って行った人のことなんか忘れたように。

それでですね…こんな感じのことは一週間に一度の周期で起きてました。

最初の頃はいずれ昇って行った人もいつか戻ってくるだろうとみんな笑って楽観視していたんですが、最初に人が昇って行った日から四週間後、里長が突然空へ昇って行きました。

これには皆んな少しは慌てている様子でしたが、冷静を保とうとしていました。

相変わらず空に人が昇っていく光景に私たちはもうそれを村の一部だと思い込んでいたのかもしれませんね。

遂には私の父親まで昇って行っちゃって…いい人だったんですがね…。失礼…。

Aさんは少し涙ぐんだ様子で話し続けた。

村ではどんどん昇って行った人を称賛するようになっていき、その家族にたくさん野菜をお裾分けしたり、要らなくなった服をあげたり…なんというかいたれり尽くせりだったんですよね。

どこに行ったかわからない人を称賛し、残された家族に感謝する。そんなおかしな風習が新しく出来ていました。

14歳の私でもそんなことおかしいだろってわかってるのに、大人達はまるでわかってない様子でした。

人って一度信じたら、それをずっと信じて生きていたいものなんですかね…。

初めて人が空に昇って行ってから一年が経とうとした時には、作物も安定して豊作の影響で、収穫できていたので、子作りする人も増えていて、ちょうどいいバランスが取れていたと思います。

今となって考えたら、食料が安定したから子作りする人が増えたんじゃなくて昇って行く人たちの代わりを作るためにしてた行為なのかもしれませんね。

完全にこの異常な事が根付いてしまった私の村で、事件は起こりました。

朝起きると、空は真っ赤に染まっていて、雨が降っていました。

時計のさす時間は午前7時、何度目を擦っても変わらない現実でした。

私は外に出て、再度現実か、確認しました。

頬から伝わってきた雨は赤く、血のようでした。入り込むように口に入ってしまった赤色の雨は隠しきれない鉄分の味がし、これは血と私を確信させました。

空は人を喰っていたんです。

よく聞きませんか?事故によって飛び立った血の所に異様に草が生えてたり、豊作だったのはそのせいなんでしょうね。

このことは母親にもちろんすぐ伝えました。

ですが母親はただ一言。

「今日は雨なのね」

とだけ。

私は逃げ出すように服を着替え、朝食も食べず、外に出ました。

傘もささず、誰のかもわからない血を浴びながら走り続けました。

通りがかる人は傘をさし、ただの雨かのように振る舞っていました。

自分の記憶にある限りの、町への道を辿り、

町に出ました。

血だらけの私を見た町の人たちは私のことを通報しました。

私はそこで『やっと、まともな人に会えた…』と思いました。

ここからのことはもう村については知りません。

ありがとうございました。


空は人を喰う。

空[喰う]

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

山田です。あなたを潰します。 @YamaNsa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ