青は藍より出でて藍より青し
磧沙木 希信
青は藍より出でて藍より青し
教壇に立ち、生徒たちの顔をゆっくりと見渡す。
いつもの賑やかな雰囲気はなく、静寂が広がる教室。
聞こえて来る音は、鼻をすする音だけ。
「なんだ、どうした? 今日はやけに静かじゃないか」
出来る限り、いつものように話かける。
いつもは授業をサボる生徒も、クラスのお調子者も、今日は借りてきた猫の様に静かにしている。
「ふぅ……それじゃ、授業を始めようか」
しかし誰一人として、口を開く事も、教科書を開こうとする者はいない。
俺も今日だけは教科書を開く事はなく、生徒の目だけを見て話を始める。
「一つ……古い中国のことわざを一つ、教えよう」
自分の声がやけに大きく聞こえる。
「”
後ろを向き、黒板に書き込む。
チョークの「カツッカツッ」と、その音だけが教室に響いている。
「この”
振り返り、生徒たちの顔を見る。
「次に、言葉がどうできたか。由来ってやつだな」
いつもとは少し違う授業風景。
「みんなは
でも、いつも通りに授業を進める。
「そんなことから、このことわざは二つの意味で使われる」
良い生徒たちだった。
「一つは、人は勉強や努力をする事で、色んな事を経験する事で、生まれ持った才能を越える事が出来る。そんな意味だ」
色々あったな。
「そして、もう一つの意味が……」
本当に楽しかった。
「……教えを受けた人が教えた人を越す事が出来る。つまり、君たち生徒が俺たち教師を越す事が出来る。そう言う事を表すことわざだ」
それを聞いた生徒たちは、下を向き肩を震わせている。
……時計を見る。
……もう、時間なんだな。
「みんな……」
ありがとう。
俺は涙をこらえ、震える声を抑え、心からこの言葉を送る。
「卒業、おめでとう」
青は藍より出でて藍より青し 磧沙木 希信 @sekisakikisin
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