第16話 秋人に嫌がらせをした男子は戻って来てほしい言うが、今さらもう遅い

 一方その頃……秋人の転校前の高校で。


 秋人が所属していたクラス、そして彼と同じグループだった一軍男子の葉場はば 信高のぶたかは焦っていた。


(くそっ、なんでこんなことになりやがった……)


 もともと信高は秋人や針野 剛を中心としたグループで、クラスでは面白おかしくやっていた。


 しかしある時からおかしくなった……今では一軍の陽キャグループも解散してしまい、一番クラスで目立っていたグループに所属していた信高ですらぼっちで昼食を取る日があるくらいだ。


 全部、秋人がいなくなってから上手くいかなくなった……信高はそれを認めざるを得なかった。


 秋人に嫌がらせをしてグループを追い出そうと言い出したのは針野 剛だ。


 もちろん信高もそれに賛成をしたし、積極的に彼を追い詰めるために行動した。秋人がクラスの可愛い女子たちにちやほやされているのが気に食わなかったのだ。


 剛が指示を出し、信高が主体となって行動をした。その結果、秋人は学校に来なくなって転校していった。


 これで剛や信高のもとに女子たちが集まってくると思いきや、なぜかグループの女子たちは徐々に距離を取るようになってしまった。


 やがて信高は気が付いた、彼女らは秋人がいたからグループで一緒に行動していたのだと。


(認めたくはないが……アイツがイケメンなのも、グループを上手くまとめていたのも事実だ)


 秋人が転校をしてから榎本 美沙希まで転校してしまうし、剛は退学になってしまうし……すでに信高が絡んでいた人物は去ってしまい、彼はぼっちになっていた。


(やっぱり秋人のやつに戻って来てもらうしかねぇ)


 秋人の転校先の情報をキャッチした信高は彼を待ち伏せて、ようやく話しかけることに成功した。


「おい、秋人。やっぱり俺たちの高校に戻って来てくれよ!」


 開口一番信高はそんなことを言った。


(やっぱ顔見るとコイツムカつくわ~こんなやつに戻って来てほしいとかいうのは癪だが、俺の理想の高校生活のためだ。どうせお人好しのお前なんか、こうやって頼まれたら断れないんだろ?)


 そんなことを考え、内心でニヤニヤと笑みを浮かべる信高。しかし、そんな彼の心を打ち砕くように秋人は言った。


「戻るわけないだろ……自分がなにしたかわかってんの? 今さらもう遅い」


「は……?」


 唖然とする信高の横を、秋人は通り過ぎていく。


 しかしそんな信高の前に、1人の見知った生徒の姿があった。


「おぉ、美沙希じゃん! 久しぶり。今秋人のやつに声かけたんだけどさ、あいつ調子に乗りやがってさ――」


 と、信高は榎本 美沙希に声を変えるが、彼女はそこに信高がいることに気が付いてすらいないように素通りしていった。


「ちょっ、秋人帰るの早すぎ!」


「いや、そんなこと言われても……」


 唖然とする信高の後ろを秋人と美沙希は楽しそうに会話しながら通り過ぎていくのだった。

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転校先では陰キャぼっちとして静かに過ごしたいのに、なぜか次々と美少女たちの好感度が上がって行ってしまう件。 参戸芽 ショウジ @hitori_nomithi

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