第2話 サイドB~リョウマと後輩~恋する男はバラ色、頼まれた後輩は灰色~

「お願い。必要な物は全部自腹で購入するから!」


「そんなことを言われても困りますよ」


 ここは某国立研究所の一室。リョウマは別部署の後輩にお願い事をしていた。


「僕は細菌やウイルスの研究部署だから、これを作ることできないんだよ」


「そりゃ、そうです。でも、ここだって耐水性や耐火性あるからと言って簡単に使わせるわけには……」


「そこをなんとかして!」


「大体、どうしてそんな物を自分で作ろうと思ったのですか? 買った方が早くないっすか?」


「動画を検索してこれだと思って。原料の酸化アルミニウムと酸化クロムは手にここで買えるし」


「いや、確かに理屈では作れるのだろうけど、動画でも不完全だからバーナーで追加加熱していますね。無理なのでは? それに手作りなら方向も違いませんか? なんでルビーを手作りしようと思ったのですか」


「う……。それは」


 憧れの彼女がルビーが誕生石で、なおかつ手作り男子が好きというからには宝石を手作りするしかないって、さすがに恥ずかしくて言えない。


「大体さ、仮に合成できたとして。どこで研磨するのですか? 原石を飾るなら天然石の原石の方がコストいいですよ? 動画のルビーもお世辞にもきれいではないし」


「ううっ!」


 痛いところを突かれ続ける。


「もしかして、誰かに贈るのですか? 相手が誰であっても引かれます」


 もっと痛いところを突かれた。確かに付き合う前から手作りは重たい。


「わかった。合成ルビーは諦めよう」


 僕が諦めたように言うと後輩はほっとした顔をした。そりゃ、業務時間外でも高温釜を使わせて欲しいなんて無茶な願いだった。


「それにしてもルビーですか。昔は日本でも採れたらしいと聞いたことありますが、今はどうなんですかね。あまり詳しくないけど」


「え?」


 ~~~~~


『と、言う訳で手作りルビーは諦めましたが、日本のどこかでルビーが採れるらしいです。お義姉さんは宝石に詳しいだろうから教えてください』


 私が呆れてリョウマ君のメッセージを読み上げたらリョウタが大きくため息をついた。


「やはり、あいつは暴走していたか」


「うん、さすがに私でも宝石を手作りする発想は無かった」


「で、ユウさんはルビーの鉱床教えるの?」


「はっきり言って知らん。わずかながらサファイアが採れるらしいところは聞いたことあるが、教えたら溶かして再結晶するとか言って荒らしかねんから教えん」


「恋、叶うのかねえ」


「彼だけ頭の中はバラ色というのも困りものだな」


「周りは灰色になるよね」


 珍しく二人揃ってため息をつくのであった。






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【KAC7】それぞれの色石 達見ゆう @tatsumi-12

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