【KAC7】それぞれの色石
達見ゆう
第1話 サイドA〜ユウとリョウタ〜奥様はバラ色、夫は灰色〜
私はこの日を楽しみにしていた。こないだリョウタが買ってくれると言ったコレクター石の『ユークレース』が届く日だからだ。
「どんな色合いが届くのかなぁ。画面と実物は違うからな」
ウキウキとしている私をよそにリョウタは落ち込んでいる。
「僕がもうちょっと相場を知っていたら……せめて安いコレクター石を知っていたら」
「まあまあ、私が青い石好きで良かったな。ユークレースは青がメジャーなんだがピンクだと希少性と値段がガーンと跳ね上がってもっとすごいことになるから」
「ううっ、卑怯だよぉ。なんで同じ宝石なのに色やらレア度が変わるんだよぉ」
「ま、宝石の基礎となる成分に鉄やクロムなど入って変わる。有名なのはコランダムだな。赤ければルビー、青ければサファイアとなる。その中でもなかなか採れない色がレア度が高くなる」
私が説明してもリョウタは涙目で電卓を叩いている。
「現代は庶民でも手を伸ばせばダイヤモンドが買えるが、昔はそもそも研磨技術が発達してなくて、流通量も少なかったから、ホワイトトパーズやホワイトジルコンをダイヤの代用品にしてた。
ダイヤとクォーツ以外の無色透明は不人気。混ぜられるとわからなくなるからな」
「ううっ、昼は弁当持参は当然として、ボーナスまでなるべく残業増やすか、そのために先輩の仕事を引き受けるか。副業禁止だからいろんなポイントを活用して、資産運用はリスクあるから……」
私がせっかく宝石の説明をしても、リョウタはひたすら電卓を叩いて自身のやりくりに苦悩している。私に買ってくれると言った以上は責任とるべきだし、何よりバラ色の気分を台無しにしないで欲しい。
実はユークレースでも無色透明になるとドンと安くなるが、やはり青いのがいいと注文したのは黙っておこう。
「なんでユークレースと言ってしまったかなあ」
まだリョウタは落ち込んでいる。いい加減落ち込まれたままだと後味が悪いので、私は話題をそらすことにした。
「しっかし、リョウマ君の想い人が
「あ、ああ。そうだね。ユウさんの弟子とはね。副業禁止だから個人的に教えてるのでしょ。何がきっかけだったの?」
「ああ、痴漢に襲われそうな彼女を助けたら、弟子入りさせてくれと頼まれてな」
「お、おう。そういう経緯なのね」
リョウタが納得したような複雑な顔をしているが気のせいか?
「リョウマもいろいろとまあ、波乱の人生を歩みそうな。あっ、そういえばなんかプレゼントをしたいというから、ユウさん経由で誕生日や好きな物を知ってたら教えてほしいって連絡来てたよ」
「プレゼント? 重たいなあ。筋トレしているからプロテインでいいんじゃない? あとは手作り出来る男性はいいとか言ってたけど、それは早いよな。あとは誕生日は詳しく知らないけどルビーが誕生石と言ってた」
「ありがとう。じゃあ、誕生石はルビーと。手作り男子が好き、プレゼントはプロテインがお勧めとユウさんが言ってた、と。送信」
「うまく行くかなあ」
私は顔がにやけてしまう、やはりいくつになっても恋バナは楽しい。
「どうだろう? あいつは時々暴走するからなあ」
リョウタが遠い目をしているということは過去にリョウマ君は何かやらかしたのだろうか?
~SideBへ続く~
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