さみだれが、水曜日

















けむたい小雨が水曜日

 うつっと窓に張りついて

梅雨ごと不安が水曜も

 うらぶる眉にふりしだる


波打つカーテン水曜日

 こじゃれた花瓶の影につき

しじまのカーテン水曜日

 こがれた花弁の香りたつ


背中に合わせた水曜の

 吹けども風に音はなし

植わった枕は水曜日

 やめども小雨のらしめる


たとえば春は水彩画

 水にしめって終わります

たとえば梅雨は水墨画

 色はなくなし闇はなし


卯の花くたしあの頃の

 根雪のとけて還ります

春の終わりのあの頃の

 なみだをうげて還ります


わかるか、わかるか、おどけるか

それが摂理と戯けるか

わかるか、わかるか、あざけるか

それさえ悲愴と嘲るか


千紫万紅の水曜日

 さみだれしめってさんざめく

死花しかおどろう水曜日

 かがみのほむらのふりしだる


ほこりかぶった水曜が

 ならべて頬にかがやくも

ほこりかぶった水曜は

 とりとめもなくうつくしき


膂力りょりょくの伏せたこの花も

 ただいっしんの夏季を待ち

けむたい小雨が水曜の

 いまはしおれたままに逐う……















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雜人念歌 川辺いと/松元かざり @Kawanabe_Ito

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