第12話 交錯
「とりあえず今日はここで一旦ログアウトしよう。街の中は安全だからね」
サキナが話を切り出した。ちょうど俺も辞めようと思っていたところだった。
「そうだな。ノナミはどうする」
「うん。私もログアウトする」
「じゃあ明日の午後8時にまたログインするってことでいいかな」
「わかった。俺は大丈夫」
「私は用事があるかもしれないから連絡する用にメールアドレス送っとくね」
ノナミはすぐにメールアドレスを打ち出しチャットに送った。
「わかった。じゃあまたね」
サキナはログアウトした。
「じゃあ俺も。また今度な」
ナツヒも続けてログアウトした。
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「ふぅ」
ノナミはため息をついた。
そしてすぐに電話をかけた。
「もしもし」
「お、ノナミかそっちの調子はどうだ」
「順調ですサキナは私を疑っているようですがナツヒは徐々に信用してくれていると思います。あとコインの件ありがとうございました」
「念の為に渡しておいて正解だったか」
「はい。レストランに行く際2人ともお金が足りなかったので私が奢りました」
「危うくキルしていないことがバレるところだったな」
「まあコインを持ってなかったとしても何とか誤魔化せたとは思いますが」
「ああそうか。それじゃあ今後も頼む」
「はい。では失礼します」
ノナミは通話を切った。
「よし…」
ノナミはログアウトした。
そしてVRヘッドギアを外しゆっくりと起き上がった。
「面白くなってきたわね…」
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悠陽はVRヘッドギアを外しスマホの時計を確認した。
「まだ9時半か」
意外にも時間は経っていなかった。そしてニュースを見てみることにした。すると…
「新作のゲームオブジェクト・アビリティでログアウトできない問題が続出しており警察は調査をしており…」
「とりあえず寝よう。なんか疲れたし」
体は疲弊してしていないにもかかわらず頭は疲れ切っていた。悠陽は眠りについた。
次の日。7時半に目を覚ました。窓から強い光が差し込む。今日は晴天。雲ひとつ無い散歩日和である。睡眠時間は取れているのにもかかわらずあまり寝ていないような気がした。
「そういえば今日は土曜日か。」
オブジェクト・アビリティが発売されてから今日で3日目。顔を洗い口をゆすぐ。普段着に着替えリビングに向かう。そしてお母さんが作ってくれる朝ごはんを食べる。その後歯を磨く。これがいつものルーティーンとなっている。
「おはよう母さん」
父親はまだ寝ているようだ。夜遅くまで働いていたのだろう。
「おはよう。朝ごはんできてるから温かいうちに食べてね」
俺は席に座る。
「いただきます」
今日の朝食はわかめご飯のおにぎりにスクランブルエッグとソーセージ、そして水。一般的な朝食だ。
俺は昨日の情報量で頭がいっぱいだった。
「大丈夫?」
俺は小さい頃から考える時に下を向いてしまう癖がある。母親はそれを知っている。
「ああ。いや大丈夫」
俺は咄嗟に促した。母親は不安そうな顔をしていたように見えた。
「ごちそうさま」
俺は食器を洗い、歯磨きをして自分の部屋まで戻った。
「ん〜。暇だな」
オブジェクト・アビリティをやりたいところだが1人で行動するのは辞めておきたい。街の中が安全とはいえ万が一が有り得るからだ。
とりあえず情報を頭の中で整理することにした。重要なことは3つ。1つ目はノナミが何故俺たちのパーティに介入してきたのか。2つ目は牢獄はどこにあるのかそして助け出す方法があるのならどうやって助け出すのか。そして3つ目はラルクスの申し出だ。
牢獄では死んだプレイヤーは自らログアウトできないという情報をノナミから貰った。もしそのフレンドと結託して嘘を俺らに教えていたとしたらどうだろうか。仮にその情報が嘘だとしてなんのメリットがあるのか。いやそれはない。昨日見た記事に書いてあったじゃないか。ログアウトできない問題が続出していると。俺は色々考えすぎて頭がパンクしそうになっていた。するとスマホの通知が鳴った。サキナからだ。
『いきなりだけど今日の10時ここに来れる?』
というメッセージと共にMAPの写真が送られてきた。
『了解。暇だから全然行くよ』
『ありがとう!じゃあまた後で!』
俺は少し違和感を感じた。チャットができるのに直接じゃないと伝えられないものでもあるのかと。
俺は画像を見た。
「これって…」
指定された場所はオブジェクト・アビリティを制作したレクイエルのオフィスだったのだ。しかもレクイエルのオフィスは意外と近い事がわかった。徒歩20分ほどで行ける距離だったのだ。有名なゲーム会社はだいたい認知しているがその会社がどこにあるかなんて興味はなかった。
「こんなに近かったとは…」
俺は必要そうなものを持って家を出た。親には用事があると伝えた。
オブジェクト・アビリティ アトラ @atora58
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