第11話 ラルクスの申し出
「私はあなたをパーティから外さない。でも私達の役には立ってもらう。あなたから懇願してきたのだから」
とサキナは言った。
「ま、まあとりあえず飯でも行かないか?そこで話そうぜ。あ、でもお金もってないんだった」
「私は10コイン持ってる。けどこれじゃあ買えないでしょうね」
どうやらコインは1人倒す事に5コイン手に入れることが出来るらしい。経験値のポイントはパーティで共有されるが通貨は共有されないようだ。
「じゃあ私が奢ってあげるよ」
ノナミが切り出した。俺としては少し意外だと思った。ますます何が目的なのか検討がつかない。
「確かにノナミはプレイヤーをキルしまくってお金有り余ってるもんな」
「そう。あんまり使いどころがないのよね」
ノナミは落ち着いて言った。
俺とサキナ、そしてノナミはこの街のレストランに行くことになった。店の中は広く、机と椅子が木で出来ていてとても落ち着く場所だ。
「さあ何がいいか選んで」
ノナミは言った。
特上ステーキにふわふわのオムライス、高級お肉を使用した肉汁たっぷりのハンバーグ。普段食べられないようなものばかりだ。俺はハンバーグを注文した。そしてサキナはパフェを、ノナミは何も注文しなかった。
「ノナミ。お前はなんか食わないのか?」
「うん。別にお腹空いてないから」
しばらくして水と一緒に食べ物が届いた。
「いただきます」
ハンバーグを口に入れると肉汁が染み込み肉の旨みが口の中に広がる。正直いままで食べたハンバーグの中で1番美味かったといってもいい。サキナは何も言わずに黙々と食べ進めていた。
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ノナミ
スキャンしたオブジェクト 花
レベル13 次のレベルまで残り8ポイント
HP80 攻撃力60 経験値効率25
・オブジェクトスキル
超花
このスキルを使用するとオブジェクトアビリティのクールタイムが10秒短縮される
・オブジェクトアビリティ
レベル1 桜花爛漫
レベル5 茨
レベル10 毒花春嵐
レベル15 ???
レベル20 ???
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「今ノナミの性能を見てるんだけどさ。オブジェクトスキルの『超花』って強すぎじゃね?俺なんてレベル1じゃ全く役に立たないスキルだから羨ましいな」
「うん。強いけど『超花』のクールタイム自体は長いからそういう意味ではバランス取れてるのかもしれない。だけどこのスキルはオブジェクトアビリティが増えれば増えるほど強くなるからクールタイムが長いのはあまり意味をなしてないかもね」
ノナミは俺に向かって淡々と説明をした。サキナは黙ってパフェを食べながら耳を傾けていた。すると…
「君たち決闘に興味はないかい?」
衣服は全身黒1色。黒いシルクハットを被った謎のおじいさんが突然話しかけてきた。
「決闘?そもそもあなたは誰なの?」
サキナは問う。
「申し遅れました。わたくしはこの街レクティアを統治している『ラルクス』というものです。この街で1番偉い人とでも思っておいてください」
「おじいさんNPCか」
「はいそうでございます」
このゲームのNPCには毎回驚かされる。このゲームのNPCの名前は赤色、プレイヤーの名前には青色に縁で囲われている。つまりそれを確認することでプレイヤーかNPCかを安易に判断出来る。しかし顔を見ただけでは通常のプレイヤーと見分けがつかない。NPCとプレイヤーを見極めるのはとても難しい。それほど高性能なのである。
「明後日に起源の門から北に位置する闘技場でわたくし主催の大会が開かれます」
(ノナミがキルしまくった闘技場か…)
「参加されたいようでしたら当日にこの紙を持って来てください。参加したくないのでしたら処分していただいて結構ですので…」
ラルクスは紙を取り出し俺たち3人に渡した。
「ではご機嫌よう」
そう言ってラルクスは店からでていった。紙に書かれていた内容は3対3でのトーナメント制で戦い、レベルは全員50レベルの統一、優勝者には1000経験値ポイント(10レベル分)、そして通貨となるコイン1000枚貰えるとの内容だった。
「正直メリットしかないから出るべきだと思うけどな。面白そうだし」
「でもこの世界でやられたら牢獄に閉じ込められてログアウト出来なくなる。もしそれが適用されるのだとしたら…」
「決勝まで全員が生き残り優勝するしかないってことですよねサキナさん」
陽気な声でミナミは言った。
「冷静に考えればそうだな。完全に報酬に釣られてた」
「とりあえず私は行く気はない。どう考えてもデメリットが大きすぎる」
サキナは言った。
「もし牢獄システムが適用されてなかったとしても?」
ミナミが問う。
「まあ、とりあえず猶予はあるからしっかり考えましょう」
サキナは冷静だった。
「そうだな。サキナの言う通りゆっくり考えよう」
俺とサキナは食べ終わり、ミナミは宣言通りお金を出してくれた。
「ありがとうございました〜!」
女性のNPCが帰り際に声をかけてくれた。
「ミナミ。奢ってくれてありがとな」
「お礼なんて要らないよ」
ミナミは笑顔で応えた。サキナは何も言わなかった。
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