第11話 ゼニジャー☆将軍の願い の巻

「さ、早く行くんだ」


将軍に促され、ゼニジャーはその場を去った。



ゴンゾウのもとへと戻ったゼニジャーは、今あった事全てを話した。


「なんてひでぇ事しやがる!」

唇を噛み締め、ギュッと強く握りしめたゴンゾウのこぶしが、プルプルと震えていた。


大老井伊と老中阿部の悪巧みを聞いたゴンゾウの体中には、怒りが渦巻いている。


「悪い奴らが特をして、まじめに一生懸命やってる者たちが損をする。こんな世の中なんざぁ、クソ喰らえじゃ!」

ゼニジャーの小さなその体も、怒りに震えていた。


ゴンゾウとゼニジャーは、すぐにお城を後にした。


今日は新月。


月不在の今夜は、より一層、深い暗闇が辺りに広がっている。



茶室に着いたゴンゾウは、ゼニジャーに言われた通り、いつも将軍が座っていた畳を持ち上げた。


するとそこには、小判がぎっしりと詰まった千両箱が敷き詰められていた。


「よし。これを全部城の外に運び出す!奴らも、さすがに城の外までは探すまい」

そう言ってゴンゾウは、千両箱を両脇に抱えると、いつものようにヒョイと塀を乗り越えて、城の外へ出た。


そして、少し離れた木の下に、それを埋めると、また茶室へと戻った。


これを何度か繰り返しているうちに、漆黒の空がグレーに変わった。


「よし、これで最後だ。この茶室にまた将軍様は戻って来る!それまでワシとゼニジャーでこいつを貧しい人達に届けるぜ!」

ゴンゾウは、最後の千両箱を両脇に抱えると、将軍が眠るお城に向かってそう言い放った。次の瞬間、


「ドロボー」


あっという間にゴンゾウは、数人のサムライ達に囲まれてしまった。


すぐにゴンゾウの懐から顔を出したゼニジャーは、サムライ達の目を目掛けて飛び出した。


「いてててて」


目を押さえたサムライが次々と、その場にうずくまった。


「ゴンゾウ親分、早く行って下さい!」


「すまぬゼニジャー、後で会おう」

ゴンゾウはそう言い残し、千両箱を抱えその場を立ち去った。


「ここから先へは行かせねぇ!」

ゼニジャーは残るサムライ目掛けて飛んだ。


するとサムライは、刀をバットのように振りかざした。


不意を打たれたゼニジャーは、刀の側面に命中し、まるでバットで打たれた球のように、遠くへ飛ばされてしまった。


そうとは知らないゴンゾウは、千両箱を木の根元へ埋めると、ゼニジャーが戻って来るのを待った。


「イヤな予感しかしねぇ……いや!あのゼニジャーに限ってそんな事は……」


〜つづく〜

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【連載】ゼニジャー ゆめ ちかぷ @yume426

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