灰色の世界
ミハナ
灰色の世界
錆びて朽ちた、今にも崩れそうなコンクリート郡に、錆びた鉄柱があちこちに倒れている。
光化学スモッグが街を包み込んだままの頽廃した街並み。
オーバーテクノロジーだった世界は、貧富の差が激しくついてしまい、街はかつてのスラム街の様だった。
裕福な奴らは高台に住み、空域権を振りかざし綺麗な空気を吸っていきている。
貧しい人や子供たちは、僕らは這いつくばりながらこの世界を生きていくしかないのか。
上空を見渡せばはるか遠く、ひび割れた空の色を移した変わらない青空が今にもふりかかりそうになり、僕は下を向いてあるいた。
光化学スモッグだらけのこの世界に希望はあるのか。
僕は家路を急いだ。
今日も収穫はゼロだ。
アキトを直せる人は見つからなかった。
闇市で仕入れた濁った水が入ったボトルと、辛うじて食べられる肉の塊。
それだけを持って、荒れたあばら家である、屋根さえあれば雨露をしのげる場所に陣取った古びた家に戻った。
「ただいま」
『おか……ルイ』
「今日も収穫ゼロだ。ごめんな、直してやれなくて」
『だいじょうぶ』
アキトはギギ、と音を立て、僅かに首を振った。
アキトはアンドロイドだ。今は亡きオーバーテクノロジーの、捨てられていたアンドロイド。
昔は一緒に遊べてたのに、内蔵コンピュータがイカれたせいか、もう歩くことも出来ない。
肌のパーツは滑らかで、まるで人のようなのに、駆動音が錆び付いていくのが耐えきれずに僕は傍らに寄り添い、手に入れた僅かな肉塊を齧る。
アキトはアンドロイドなので何も食べれない。
自分だけのささやかな食事を済ませて、アキトにそっとキスをした。
「ん……っ」
唾液をアキトに検知させて、緩やかに瞼が落ちていくのを眺めて、僕は肌に触れた。
もう温度管理も出来ないから、温かくもない。
無機物の冷たさに泣きたくなる。
型番が刻まれた首筋を撫れば、セクサロイド100837 AKTO と刻印してある。
セクサロイドは裕福な貴族達がこぞって買い漁っていた、セックス用アンドロイドだ。
未成年略取が盛んだった時期、性犯罪が絶えなかった時の政府が大金をつぎ込んで作らせていたのがセクサロイドだった。
でも僕はそんなことしたくなくて、ボロボロだったアキトを手に入れた。
家族が欲しかった。
出迎えてくれる、僕なりの家族が欲しかった。
でも、もうアキトを直せる人はいない。
僕も体力ももたなくなってきた。
光化学スモッグや、灰だのに内臓がやられていた。
痩せっぽちな体で、アキトを抱きしめ無理やり眠りにつく。
明日は、生きられるだろうか。
『ガガ、ピー……政府、からの、通達デス。
政府はこの区域を放棄、シ、多国に譲りワタス事が決定しました。
ガガっ……多国が制略奪しにく、皆、二ゲ……ガガ、ピーーーー……………』
灰色の世界 ミハナ @mizuhana4270
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