(三)-7(了)
だから私は「募金していただけないならどうぞ行って下さい」と言って手で促した。
男は勢いよく鼻を鳴らすと、駅の改札の方へ歩いて行った。
きっと彼は幼い頃から勉強をする環境が与えられていたのだろう。そのため彼はそれに十分傾注することができた。そして試験という「公平」な競争の中で「公平」に勝った。彼にとってはそれが当たり前の環境であり、他の人が違う環境に置かれているなんてことは考え及びもしないのだ。しかし、彼と同じ環境を与えられていない者にとって、それは「公平」であったのであろうか。
そう考えると、この国にはまだまだ「善意」が足りていない。そう思わずにはいられなかった。
(了)
善意の総量 筑紫榛名_次回5/11文学フリマ東京 @HarunaTsukushi
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★47 エッセイ・ノンフィクション 完結済 105話
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