春色に染めましょう

西しまこ

春の妖精

 白い梅の花が咲いて、春の妖精は梅の花からぽんっと飛び出して、くるくると青空の下で踊りました。

「あーあ、よく眠ったあ!」


 梅の花が咲くと、いろいろな花が咲き始めます。

 桜が咲いて木蓮が咲いてレンギョウが咲いて。


 うふふふふ、と春の妖精は笑って、小さな光をぽんっと地面に落としました。

 すると、地面には若草色の緑が広がりました。小さな白い花も咲きました。

 春の妖精はふわふわと泳ぐように飛びながら、小さな光をぽんっぽんっと辺りに飛ばしたのです。

 光は至るところに落ち、落ちたところには春の色が広がりました。


 光がぽとんと落ちますと、若草色が広がります。

 光がぽとんと落ちますと、桜の蕾が桜色に色づきます。

 光がぽとんと落ちますと、黄色いお花が笑います。


「春だね」

「春の色になるね」

「春の光だね」


 さまざまな妖精たちが口々に歌うように言います。

 春の妖精は、空をびゅんと飛んで行って、それから梅の木でぐるんと前回りしました。

 他の妖精たちも春の妖精のあとを追いかけていき、梅の木で前回りをしました。

 かわいらしい笑い声が辺りに響いて、その笑い声は光の波となって、辺りに広がりました。そして、桜の木も木蓮の木もれんぎょうも、他のさまざまな花々も、みな花咲く準備を始めたのです。


 春の妖精は眠くなったので、梅の木の根元のところで眠りました。

 他の妖精たちも眠りました。

 みんないっしょに、春の夢をみました。

 夢の中でも笑いながら転がり、花びらいっぱいの中で飛んだり跳ねたりしたのです。


 しあわせなしあわせな、春の夢。

 その夢の気配は、町中を包み込み、みなこころの中がぽかぽかしました。

 子どもたちは眠くなってしまったかもしれません。


 春の妖精はぱちんと目を覚ますと、ふああああと、あくびをしました。

 すると、小さな花ばながすくんと咲いて、笑いながら「春がきたね」と言いました。

 春の妖精はにっこり笑うと、また小さな光をぽんっぽんっと出して、辺り一面光のつぶで満たしました。


 春だね。春だね。うれしいね。新しいことが始まるね。

 みんなの期待と希望が光の中にふわんと入り込み、そして、青い空の高いところへ飛んで行ったのです。


「さあ、もっともっと、春色に染めましょう!」


 春の妖精は、梅の木のところでぴょこんとジャンプをすると、春のうたを歌いながら光のつぶを飛ばして、春の浮き立つような気持ちをみんなに届けたのです。





    了

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