40話 合宿の提案
40話 合宿
雨宮監督が就任してから少し経った頃、練習が終わった後に集合している時に合宿の提案をされた。監督の伝手でグラウンドと宿泊所を安く使わせて貰えるそうだ。
この提案に吉岡キャプテンをはじめとして殆どの部員が乗り気になっている。
そもそも予選敗退するとは思っていなかったので、このタイミングで合宿を行う予定がなかったのだ。他の部活も野球部が甲子園に行くと思っていたので、グラウンドの使用権を他の部活動に譲ってしまっていた。伊藤先生と雨宮監督が話に折り合いを付けて、なんとか使用権を返して貰えた。しかし他の部活で練習試合を組んでしまった日はグラウンドの使用権を返して貰えなかったので、グラウンドを使える時間が減ってしまう事態になった。練習時間を補うためにも合宿の提案は渡りに船だった。
「何日間くらい合宿する予定ですか?」
「平日の5日間を予定している。休日だと他のチームとグラウンドを競合したり、宿泊所も割高になってしまうんだ」
それもそうか。監督はできるだけ安くするために頑張ってくれたみたい。帰省する部員もいるので、お盆前の平日5日間で合宿を行うことに決まった。
「これから秋季大会に向けての練習になる。秋季大会はこんな地獄のような暑さにならないから、日中の暑い時間はトレーニングルームや室内プールを活用していく。水着を忘れずに持ってくるんだぞ」
甲子園が控えているなら暑さ対策で日中の練習も必要になるが、熱中症や練習効率を考えてメニューを組んでくれるそう。
暑い時間に涼しい部屋で室内練習ができると聞いて部員からは思わず歓喜の声が上がった。特に先輩達は去年の夏休みの練習を経験しているため喜び方が1年生より大きかった。
帰り道に皆で帰っている時に合宿の話題で持ちきりだ。
「初めての合宿だけど、プールでどんなことするんだろう?」
「泳いだり歩いたりするんじゃないか?詳しくは分からんけど。それを含めて楽しみだな」
「俺は泳ぐの苦手だから辛いメニューになりそう…」
「走一郎は昔から泳ぐのが上手くなかったもんな」
「流石に泳げない人用のメニューがあるんじゃないかな?」
「そうだといいな。泳げなくても生きてて困ることなんて殆どないから全然練習してこなかったわ。合宿で皆に笑われて後悔しそうだけど…」
「俺も泳げないから大丈夫だよ!優介と双子なのになんで泳げないのって小学生の頃よく言われたけど、今となっては気にしなくなったからね」
「秀介!泳げない同盟で頑張っていこうぜ!」
「よろしくね!」
秀介のお陰で不安な気持ちがなくなり、合宿を楽しみに迎えられそうだ。ありがとう秀介。
リトルリーグでスピードスターと呼ばれた男 勝田一 @katsu111
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