【KAC20247】パパ上様日記 ~我が家のシミ~

ともはっと

我が家のシミは黄色である。



「ねえ、あんた。一体腋に何を隠し持ってるの?」




 いつもの何気ない休みの日。

 ぐったりとしているパパ上こと私に、妻のボナンザがそう聞いてくる。

 上から見下ろすように見てくる妻。寝転がってる私。



 とりあえず、ロングスカートをぺろんと捲っておく。


「キャー、セクハラよー」

「そういうのいいから、答えなさい」

「何をだよ」


 そもそも、言われた意味が分からない。


 なんだ? 腋に何を隠し持ってる??


 どういうことかと思う。



「あんた、また右腋から妙な液体出してるでしょ」

「んぁ?――あー、そういうことか」


 そこまで言われて理解する。


 そう。私の腋は、なにか妙なエキスを出すのだ。

 汗と一緒に出てくる分泌液だろうか。いや、むしろこれは世界中の主婦、または主夫が経験しているものでもあるのだろう。

 シャツが、黄色く変色するほどの、エキス。

 腋エキス。それが、出てくるのだ。


 黄色い色だ。

 いや、正しくは、シャツに染みついたことで黄色い変色がしているのだろうか。よくわからない。


「最近は出てなかったと思うんだが」


 とか言ってみたものの、それを自分でなんとかするようなことができるわけではない。腋から汗をかけば駄々洩れであろう。

 今日も順調に私の腋はシャツの色を染め上げているはずだ。


「まあ、あんたより、凄いのいるからいいんだけどもさ。本当にあんたの一族は、この腋から出てくるこれを突き止めて直すとかしようとしないのかしら。いや、するわけないだろうし、してもらってもふーんとしか思わないけども」



 ボナンザは興味なさそうには言うが、それがなんのエキスなのかは知りたいのだろう。

 白いシャツだけでなく、灰色のシャツさえも黄色く染める、我がエキス。


 ……いや、まて。



「……誰のことだ?」



 自慢ではないが、私の一族とボナンザは言ったが、私以外がこの色を出したことがない。いや色っていうか、うん、なんだろう。この腋エキスを出している家族はみたことがない。

 だが、ボナンザの言っていることからして、もう一人いるかのようなことを言っている。



「いるわよ」



 そういってくいっと親指たてて指差す先にいるのは、我が息子。


「へへっ。黄色く染めてやったぜ」

「しかも両𦚰ね」


 お前、何を私から受け継いでんだっ!?


 更に進化した腋エキス。

 これからボナンザの洗濯はより過酷さを極めるのだろう。


 私と、息子のセバスの腋によって。

 だってあれ、洗っても全然とれねぇんだもん……。





 ため息をついてとぼとぼと歩いていくボナンザの背中を見ながら。




 今日も我が家は、



 平和である。







 ……たぶん。

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