男にごっくんされた話

スロ男(SSSS.SLOTMAN)

特にうれしくはなかった

 黒歴史というか旧い友達だと大体知っているというか、酒の席で調子に乗ってついつい喋ってしまうような話ではあるのですが。

 二十歳前後の頃の話ですが、男にフェラーリされたことがあります。しかも外国人でした。確かマレーシアだったか。彼の部屋に遊びに行き、なんとなく流れで——いやいや嘘だ、あれは向こうがその気があったのを知って私のほうから誘ったのだった。舐めたい? と。


 数ヶ月前までDTでした。池袋の激安ソープで捨てました。ダイヤルQ2で知り合った女性と何度かいたしました。端的にいえば私は大学生活を、初めての一人暮らしを謳歌していました。

 が、別に男に興味があったわけでもなんでもなかった私は、成り行きでたまたま知り合いになった彼とは単なる友達のつもりでした。妙にベタベタしてくるのは、これは文化の違いだろうと、二度目の邂逅で映画だ飯だを奢られながら思ってました。


 いやいや、それも嘘だ。あれ、この人おれに気があるんじゃないの、とは少しは思った。でも男はなあ、とも思ったし、見た目がジェフ・ゴールドブラムっぽいのも性的にはまったくそそられなかった。たとえハエ男の記憶がつい最近恐竜で上書きされたにせよ。


 そんな状態でしたが、酒と「かわいいかわいい」の連発に自分のほうから誘ってしまい、あまつさえ「飲んじゃった」と言われてしまったのでした。

 男の方がツボを知っているからフェラーリが上手い、という話がありました。そうでもありませんでした。なんか思ったより気持ち良くないぞ?

 私は頭の中で必死にセーラー服の女の子を思い浮かべてました。追い込まれていました。どのぐらい追い込まれていたかというと、私はブレザー派でした。セーラー服とかよく見ると意外と汚いし。いやいや、そもそも歳上のOLの黒ストッキングとかを思い浮かべるべきでした。というか「そもそも」を言い始めるなら、無理に自分を昂める必要あったのか⁉︎

「いれたくなっちゃった」と言われました。

 それはダメだ、とごっくんしてくれた男に私は無情に言いました。考えたらキスさえ許してませんでした。

 よく彼は耐えられたな、と思います。同じ男として。それから女性も、その気がない相手についついちょっかいを出してしまったり、その挙句拒絶したりとかも当然あるだろうなと思いました。

 男のおれでさえこうなんだから、まして他の心配もしなけりゃならない女性は当然、と。


 そのあとも一、二回は会ったような記憶がありますが、普通に食事しただけでした。並行してこの頃、初めての彼女ができるのですが、他の友達とは違って彼に会う時には妙にピリピリしてた記憶があります。女って怖ェ。

 その彼女には「ごめん濃くて飲めない」とえずきながらいわれました。ハエ男が凄かったのか出る量が少なかったのか、それはもはや定かではありません。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

男にごっくんされた話 スロ男(SSSS.SLOTMAN) @SSSS_Slotman

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画