エピローグ カーテンコール

※※※


 1965年 4月


――パチパチパチ……


 割れんばかりの拍手が会場内に鳴り響いた。

 拍手をする人々の中には、涙を流している人もいる。

 オペラ『愛するあなたに贈る歌』の初演は、大成功を収めたようだ。


 役者がずらりとステージに並び、お辞儀をする。

 主役の2人が前に出て深々とお辞儀をした後で、オーケストラピットから出てきた指揮者も歓声を浴びた。

 主役や指揮者に花束が贈呈された後、拍手が鳴りやむのを待ってシャーロットが話を始めた。


「皆様、今夜は観に来てくださり、誠にありがとうございます。

 これは、私と、私が愛した人との本当の恋物語です。

 彼の遺志に従い、これをオペラとして公演するに当たり、多くの人々のお力添えを頂きました。

 その中でも特に、この場を借りてお礼申し上げたい方々がいます。


 まずは、監督を務めて下さったジョージ・ヘイワード。


 次に、この劇場を使わせて下さったオーガスト・ゴライトリー。

 お父様には散々ご迷惑をおかけしましたが、それでも私を応援してくださり、ありがとうございます。


 脚本を務めて下さったエバーフィールド親子。

 特に、ガブリエル・エバーフィールドは友人としても私を支えてくださりました。


 最後に、作曲家ジェラルド・サリヴァン。

 ジェラルド、あなたの夢は私の夢でした。そして今、その夢は叶ったと言えるでしょう。

 あなたが創り上げた音を一音、一音、奏でるとき、私はあなたがそばにいると感じました。

 私に翼と勇気をくれたこと、私を永遠に変えたこと、本当に感謝しています。

 どれだけ苦しくても、私はあなたと過ごした日々を決して後悔しないでしょう」


 シャーロットの流す涙が、スポットライトを浴びて光った。


 真紅の幕が、厳かに閉じられた。

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愛するあなたに贈る歌 Quill pen @22076an

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