森で育った少女が人間の世界へと旅立つファンタジー小説です。印象的なのは、主人公の純真無垢な人柄と、彼女が持つ不思議な力です。
主人公は動物や森と心を通わせて育ち、人間社会の常識や上下関係といったものを知りません。そのため、人間の世界へ行く道中でも、様々なトラブルを引き起こします。しかし、彼女の中に悪意は一切なく、ただひたすらに真っ直ぐな心で行動します。そんな彼女だからこそ持つことのできる力も興味深いです。
また、主人公が森を離れる際の寂しさや戸惑いの描写からは、慣れ親しんだ場所を離れ、見知らぬ世界へ飛び込む少女の不安な心情が伝わってきます。城でも、誰もが彼女に話しかけてくれず、孤独を感じるシーンがありました。
そんな中で、ある少年と出会い、初めて心を通わせる描写があります。身分を超えて話しかけてくれた少年とのやり取りからは、これから主人公が新しい世界で成長していく可能性を感じます。
巧みな文章で綴られる主人公の冒険の始まりは、これから彼女がどのように成長し、どんな活躍を見せてくれるのか気になるところです。魔法や不思議な力、ファンタジー世界の設定も興味深く、先が気になる物語だと感じました。
背丈よりも長い金色の髪に、真っ白いドレスを纏った乙女が、ユニコーンに乗って陽の光に輝く森を駆け抜ける……実に王道な、ハイファンタジーの幕開けです!
フェルカの森の乙女と呼ばれるシャロンウィンは、賢者サリヴァンダーが残した言葉によって、ロンデルフィーネ王国の救世主としてアルトリア王のもとに招かれます。
ロンデルフィーネ王国に迫るのは、隣国コールボールを掌握した魔女のメルダイン、その力はおろか、自分の力もよくわからないシャロンウィンは、恐れ、迷いながら、それでも優しい人たちに応えようと、健気に立ち上がります。
シャロンウィンと、初めての友達になる少年ジャール、隣国コールボールの王子ブランデンの初々しい三角関係(?)に、アルトリア王の過去にまつわる悲劇、そして不気味に蠢くメルダインの影と、着々と深みを増す物語も目が離せません!
人里から離れて暮らしていた魔法を使える少女が、とある国を侵略してくる魔女と戦う物語となりそうです(レビュー時、現在進行形)
個人的には、少女がこれまで暮らしていた森に思いを馳せながらも、自分の使命をまっとうするため国に残ると決意するシーンの描写がとても好きです。
無垢な少女が、森の中の「もの」を言葉を介さずとも理解し、生きてきた情景を短い文章でとても美しく、愛おしく表現されています。
一方の魔女側は、良い意味で非常にわかりやすく狡猾で知恵も力もある「悪」として描かれています。
両者がどういったかたちでぶつかっていくのかが見どころになるのかと思います。