⚠️読んでもいいが見てはいけない⚠️

土岐三郎頼芸(ときさぶろうよりのり)

全一話 いまだあえず

 学名Creatonotos transiensという生物の一種がタイにもいるということをつい最近知った。というか「トリあえず」なんてお題をKACが出さなければ調べる気も起きなかった。


 ご存知の通りワタクシは性格は単純だが根性曲がりなので、お題をそのまま素直に使うことには忸怩であるものを感じていた。だが「トリあえず」で行き詰まった。


 安易に「とりあえず」で済ませたり、強引に「トリアージ」を持ち込んでみたりした。でもそれでは「トリあえず」ではないのだ。舞台やステージのトリ? 忍者ハットリ? 誰か他の人も面白いのを書きそうだ。鳥類のトリはあまりにも普通だ。ワタクシはオンリーワンを狙いたいのだ。


 そのとき悪魔がささやいたのかもしれない。


「鳥類じゃないけどトリがつく生き物がいるじゃないか」


⚠️この先閲覧注意。昆虫が苦手な人は絶対に読まないでください。⚠️


 思い出してしまった。


 クロスジヒトリだ。学名Creatonotos gangis。


 これならば最高にインパクトがある! なにしろもっともグロテスクな昆虫とも言われている蛾の一種だ。


⚠️警告⚠️今回のお話の昆虫の名前に見覚えがない方。昆虫は平気でもグロ耐性がない方は検索はお控え下さい。特に画像検索は絶対にしないでください。またグロ耐性に自身がない方はこの先をお読みになる場合、できるだけイメージをしないように心がけてください。警告を守らない結果何が起こっても当方には一切法的責任はございません。⚠️⚠️


 クロスジヒトリは体長4センチほどで腹部が赤い、一見小さな普通の蛾だ。蛾の類には珍しくオスの方がフェロモンを放出してメスを引き寄せる。そして繁殖期になるとフェロモンを出すコアマータという器官が腹部からニョキニョキと出てきてオスの姿が異形になるのだ


 ウネウネと動く黒いムカデかゴカイか毛虫のような触手状のコアマータが左右に2本ずつ赤い腹部から「⊃0⊂」こんな感じで出てくるのだ。あまりにもえぐい絵面だ。もはやクリーチャー。宇宙生物か魔界からの侵略者。

 

 タイにもいるそうだが、ワタクシはまだこのクロスジヒにいる。手元のタイ語の昆虫図鑑にはクロスジヒトリは載ってない。なんだ、レアな虫か。そう思ってパラパラめくると気になる名前の虫がいた。


 学名Creatonotos transiens。


 クロスジヒトリの学名と似ているな。これって多分近似種では・・・・・・ビンゴ! 正体はハイイロヒトリであった。こっちは普通にいるのか!


 ハイイロヒトリは体長2センチほどで腹部が黄色い、とても小さな一見普通の蛾だ。クロスジヒトリ同様にオスの方がコアマータからフェロモンを放出してメスを引き寄せる。


 やはり繁殖期になるとやはりフェロモンを出すウネウネと動く銀色のムカデかゴカイか毛虫のような触手状のコアマータが左右に2本ずつ黄色い腹部から「⊃0⊂」こんな感じで出てくる。まるでクロスジヒトリの色違い。やはりクリーチャー。やはり宇宙生物か魔界からの侵略者。


 まだこのハイイロヒにいるが、タイにいれば繁殖期のクリーチャー状態のオスと出あうときが来るかもしれない。楽しみなような怖いような。


 ちなみに「ヒトリ」とは灯火に集まる性質から「火取り」の意味でつけられている。そりゃそうだ。普通、昆虫を「一人」と数えるはずはない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

⚠️読んでもいいが見てはいけない⚠️ 土岐三郎頼芸(ときさぶろうよりのり) @TokiYorinori

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ