探検家ロカテリアと夕日鳥【KAC20246】

竹部 月子

探検家ロカテリアと夕日鳥

 探検家ロカテリアは、深い密林の中にいた。

 白髪しらがを後ろで一つに編んだ老婆は、自称七十歳。

 未知なる事象を解き明かすべく、世界中を飛び回る探検家だ。


 このたびのロカテリアは『夕日鳥ゆうひどり』を追い求めて、ジャングルに来ていた。

 夕日鳥はその名の通り、暖かなオレンジ色の羽毛で、頭頂部にトサカがあり、なんと大きさは二階建ての家ほどもあるらしい。羽根はあるが、空を飛ぶことはできないだろう。というのが、周辺の村に伝わる伝説だった。 

 いわゆる大怪鳥である。


 しかしこの夕日鳥は、現存する生物では無いだろうというのが、ロカテリアの結論だった。

 そんな巨大な鳥が歩き回れば、当然痕跡が残るはずなのに、密林にはそれが一切見つからない。

 可能性があるとすれば、夕日鳥が非常に用心深く隠れているか、とんでもなく怠惰で、ずっとどこかで寝こけているかのどちらかだ。

  

 羽虫を払いながら草をかき分けると、ぽっかりとひらけた場所に出た。

 細い枯草の生える、なだらかな丘に、木々の隙間から日光がまっすぐ降り落ちてきている。

 昼間でも薄暗く湿っぽいジャングルには、とても珍しい、美しい場所だった。

 

 とりあえずここで一度休憩しようと、ロカテリアは丘を登って腰を下ろした。

 胸ポケットからタバコを取り出し、火をつける。

「鳥に逢えずも、とりあえず……か」

 タバコの先の火がジジっと燃えて、老婆の眉間に深くシワが寄り、ムフーと煙が吐き出された。 

「……面白くはないね」

 そんな独り言をつぶやいてしまうのも無理は無い、ロカテリアはもう一カ月以上もここで一人で調査をしているのだ。


 座り込んだ場所は、太陽が直接当たっているせいかポカポカと温かく、今日はここで、野営することに決めた。

 足が沈み込むように柔らかい地面だ。さぞかし寝心地がいいだろう。

 愛用のトランクから小さなテントを取り出し、分割されたポールを組み立てると、ロカテリアは尖った先端を力いっぱい地面・・に突き立てた。

 

「ピィギャアア!」

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探検家ロカテリアと夕日鳥【KAC20246】 竹部 月子 @tukiko-t

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