KAC20246 異世界転移は楽勝人生への第一歩。
久遠 れんり
異世界召喚。ズーサン王国
「うわ。なんだこれ」
明日からの学期末試験のことを考え、少し悩んでいた。
先生で一人、結構いい加減な先生がいて、授業中ひたすら教科書の内容を流す。
言い分としては、予習復習できっちり自分の物にしておけと言う。
じゃあ先生なんて要らないじゃん。
そんなことを考えていたら、足下から光が上がり、地面を見ると魔方陣が輝いていた。
そして同時刻。
だが、その時床が光る。
「きゃあ」
驚く聖。
「お客さん。行く前にお金払って」
驚く店員。
だがむなしく、聖は消えていく。
「お客さん……」
店員は、消え方から、異世界転移だと理解する。
諦め、自分のマネーカードを取り出し、精算をする。
「がんばれ」
少し、応援をしながら。
別々のところからだったが、現れたのは同じところ。
床へ転び、お尻に衝撃を感じた裕樹。
そして目の前に現れる人影。
顔の上にのしかかる重みと、むにゅっとした感触。
そして我慢できない熱。
そう、聖が持ち込んだ肉まんが、顔に……
「あちー」
彼女の体を押しのけ、肉まんを確認。
潰れて割れたが、美味そうだ。
一方、押しのけられた聖は床に転がり、マネーカードが飛んで行く。
「なんだこれは?」
カードを拾い上げた神官は、初めての素材に困惑をする。
見れば金が埋められている。
だが金属とは違い、しなる。
「何か木材でも加工したのか?」
「すみません。返してください」
聖は手を出す。
だが、神官は。
「断る。そなたの物という証拠はない」
そんなことを言い始める。
「裏に名前を書いてあります」
「なに?」
裏返すと、確かに何か書いてある。
だが。
「こんな物は読めん。証拠にならん」
そんなことを言い出す。
「大体あなたがそれを持って、何に使うのですか?」
「これは古代の…… 遺物。教会が管理するものだ」
「単なる電子マネーです。この世界では、見た感じ全く使い物になりません」
そう言い切る。
聖は、周りを見て直感で異世界に来たことを理解した。
裕樹が口を開け、食べようとした肉まんを取り返し、そのままカードを眺める神官に詰め寄った。
そして財布から、使わなくなったポイントカードを差し出す。
店が潰れ、遺物となったカード。
「それなら差し上げます。裏に同じサインが入っていますが、気にしないでください」
まだ中に、八百円ほど入ったカードは取り返した。
そして向き直ると、王様が何かを言い出す前に口を開く。
「元の世界に帰してください」
「あー落ち着け。トリあえず無理じゃ。魔王を倒せば」
「嘘ですね」
「ぎくっ」
「……」
「魔王が秘匿する……」
「嘘ですね」
「とっ、トリあえず」
「嘘ですね」
その結果。
城で暮らし、帰るすべを探すことになるが、この王国。トリあえず、すべてがいい加減だった。
王家にあった禁書扱いの秘匿魔導書を読み、魔方陣のの文言。『彼の地から導く』部分を、『彼の地へ帰す』と書き換えたらあっさりと帰れた。
ちなみに禁書庫には、見張りも居らず、鍵も掛かっていなかった。
ただ帰るのに三日掛かったため、少しズレたらしく。
帰ると家が、お金持ちになっていた。
そして、聖女の力は健在。
彼女は、『異世界転移をして、戻ってきたら人生楽勝になりました』となったようだ。
裕樹君はまだ、向こうで剣技の訓練を受けているのだろう。
トリあえず、こう振れ。
次はこう来たら、トリあえずこう受けるという、よくわからない訓練を受けているのだろう。
トリあえず、めでたしめでたし。
KAC20246 異世界転移は楽勝人生への第一歩。 久遠 れんり @recmiya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます