幸せのトリに会いたい 

@mia

第1話

「とりあえずビール、中生で。あと枝豆お願いします」


 とりあえずの注文を済ましメニューを見ると、おすすめは本日の煮物になっている。地鶏と根菜、こんにゃくなどの煮物だ。

 トリを探しにこの村まで来た俺にふさわしいメニューかもしれない。

「お待たせしました」とビールと枝豆を持ってきた店員に声をかける。


「本日の煮物って何」

「本日の煮物は店長が捕ってきた鳥が入るんです。その日によって鳥が違います」

「じゃあこれ一つください」

「はい。本日の煮物一つですね」


 店長が猟をしているのは知っていた。だから時間をかけてわざわざここまで来たんだ。俺の欲しい情報を持っている店長に会いにきた。

 俺の欲しい情報は「幸福の青い鳥」ならぬ「幸福の黄色いトリ」のことだ。

 黄色いトリに会うと幸せになれるらしい。情報を探していたら、この村のハンターのSNSに黄色いトリを見たと書いてあった。

 全国各地に黄色いトリの目撃情報があったが一番新しいのがここの常連のハンターのものだった。この村のハンターのまとめ役が店長だ。話を聞いて黄色いトリに絶対に会う!


「お待たせしました」

 

 鶏の煮物が来た。「今日って何の鳥が入っているの」

「えっと、鴨が入ってます」

「鴨を煮物にしちゃうの」

「はい。煮物なら野菜とかでかさ増しできるので、肉を食べられなくても出汁がしみた野菜とかこんにゃくとかが食べられます。うちの店では煮物にしちゃってます」

「へーそうなんだ。いただきます」


 おいしいがどれが地鶏だか鴨だか分からない。

 店長にどう声をかけようか考えながら飲み食いしていると、店員に声をかけられた。


「すいません煮物のことなんですけれども、店長の鴨以外にも常連さんが庭で捕まえた黄色い鳥も入っているそうです。黄色い鳥の名前は分からないんですが、ここら辺では昔からたまに捕れて食べられているそうです」

「え……」


 俺は煮物の入った器を見る。

 これも黄色いトリに会ったことになるのだろうか。

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