第4話 やっぱり俺の話(相変わらず暗いので読み飛ばし可)
全部が終わった後で、俺のトリの閉祭宣言はよかったという話を聞いた。
「流石、ギョーカイ目指すだけあるよね。めっちゃエモかったよ」
特に何故か女子から評判だった。何がエモかったのかはこの際あんまり考えたくない。俺たちはこうやって非日常からクソみたいな日常に戻っていく。
「でも俺これから受験だから、もしそれが終わってからでもよかったら待っててって言ったんだ」
「でもお前、卒業しちまうんだからそれって残酷じゃね?」
「うーん、そう言われるとそうだな……すっぱり諦めてもらうってほうがよかったかもな」
「今から呼び出してはっきりフっておけ」
「お前も残酷じゃねえか」
やっぱり見崎の隣は居心地が良い。なんでだろう。多分こいつは俺がメガネを取っていても受け入れてくれるって確信があるからだろうな。だけど俺がマジで見崎に惚れているなんてことは、墓場に持っていくことに決めた。失恋くらい誰だってする。俺だって告白したんだぞ。返事はよくわからなかったけど、多分NOに決まってる。
俺は見崎を見て思う。俺もこいつも、恋人同士の関係なんかになりたくないんだと思う。見崎はもちろん、俺もイレギュラーな告白してからなんだか吹っ切れた。一線を越えてまで、この関係を失うのは嫌だ。俺たちはいつまでも「ギターとチャラメガネ」でいたいんだ。
***
その後、俺は映像系の専門学校へ、見崎はとある名門私立の大学に合格してそれぞれの道を歩き始めた。慣れないながらも映像制作なんかを続けているうちに、俺は映画なんかも向いてるんじゃないかと思い始めた。それからアイドルオタク兼映画オタクとして、俺は相変わらずチャラメガネをかけていた。幸い専門学校は似たような奴らが集まるので、俺がオタク丸出しでもあんまり目立つことはなかった。
見崎は大学で新たにバンドメンバーに恵まれて、一生懸命活動しているらしい。時折近況報告を兼ねて、俺は見崎と長い通話をする。高校時代は面と向かってしか話さなかったけど、今は通話だけにすれば俺はメガネを外すことが出来る。
その年の夏の終わり、見崎と通話したときのことだった。
「なあ
「マジか、おめでとう!」
その後少し言葉を交わした気がするけど、何を話したのか全く覚えていない。
「今度紹介するからな。お前も彼女くらい作れよ」
「ああ、わかったわかった」
声の調子と裏腹に、俺は震える手で通話を終えた。それからずっと泣いた。泣いて泣いて、女みてえだなと思いながら俺は泣くことしか出来なかった。
でも泣いているうちに、俺の大好きな見崎が幸せになることが嬉しくなって、そしてギターとチャラメガネの関係はずっと続くんだということが本当に嬉しくて仕方なくなった。
バカみたいに泣いた後、俺はメガネを机の奥に仕舞い込んだ。多分もう、メガネがなくても俺は見崎の隣にいてもいい気がした。
親友に後夜祭で告白した話 秋犬 @Anoni
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