第17話 人形作成③

 材料の目星を付けたところで、そろそろ人形作成に移るとしよう。

 主な材料となるのはやはり、魔力伝導率の高い『魔導石』だろう。ヤドカリの背負っている貝殻には『重黒石』を使うつもりなので、動かすのには相当な魔力が必要になるだろうが、魔導石の魔力伝導率がその問題をある程度は緩和してくれると推測している。ただ、俺もレベルが上がり、魔力も初めに比べると桁違いに増えた。なので、今回作るヤドカリ型人形は魔力消費をあまり考慮せずに作るつもりだ。


 作る部品は、

 脚×8 ハサミの付いている脚×2 胸部 腹部 貝殻 目 触覚

である。この後に何か追加で作る事になるかも知れんがそこは追々対応していく事にしよう。

 俺も、ヤドカリの体の構造とかは特段詳しい訳ではないので臨機応変に作り変えていることとする。


 「まずは胸部を作る!」

「一番簡単そうな部分だね」

いやいや、キリ君よ。一概に簡単とは言えないぞ。胸部には人形の核となる加工魔石を入れるからな。その分、魔力回路は慎重に通さなければいけないし、強度も上げなくてはならない。

 俺が一番初めにこの部分を作ろうと思ったのは、最も魔力を消耗する部品だからなのだ。

「核に使う魔石は何を使うの?」

「そうだな、少し勿体無い気もするけど、ブラックタイガーのを使おっかな」

「いいんじゃないかな?この人形が完成すれば倒せる魔物のバリエーションも広がるからね」


俺は、目の前のバカでかい魔導石に手をかざす。

「《人形作成》!」

魔導石は縦横50センチ程の塊に圧縮され、俺の前にゴトリと落ちた。

「改めて見ても不思議だよね〜。あんなに大きな岩が小さくなるんだもん。」

密度が凄そうだよな。

「次にブラックタイガーの魔石を圧縮する」

 魔導石同様、魔石が手の平サイズに縮んで、高密度の核が完成した。

 俺は圧縮した魔石を魔導石に埋め込んだ。コレで型は完成した。あとは回路を組んでいくだけ。

 ただ、回路は神経みたいなものなので全身に繋げる必要がある。だから、細かい回路は組み立て後にして、今は大まかな回路だけをつくっていく事にする。



 それから一時間ほどかけて回路を組んだ。とりあえず胸部の部品は完成したと言って良いだろう。

 俺は、次は腹部、その次は脚というふうにどんどん作っていく。こういう、何かに没頭する時間ってのは割と良いものだ。前世では、ザ•社会の歯車って人生しか送ってこなかったからな。何も考えずに工作するなんて小学生の頃以来だ。


「集中してる所悪いんだけど、もうすぐお昼時だよ?教会に戻らないと」

 そんな事をを考えて少し感慨深い気持ちになっていた俺の耳に、ふとキリの声が聞こえる。

 どうやら相当な時間没頭してしまっていた様だ。時刻も午前11時を回っている。教会での昼食の時間が迫っている。

「おっと悪い。つい時間を忘れてしまっていた。一旦戻ろうか」

「だね。でも、門の前にいる傭兵は大丈夫なの?」

「大丈夫だろう。この時間帯だとアイツらもちょうど昼メシを食ってる頃だからな」 

 作成途中の人形を茂みに隠し、俺たちは教会へと戻った。





 「久しぶりだね、レヴィ!」

昼食後、人形作成に戻ろうと食堂を出る途中、後ろから声がした。振り向くと金髪の少年が立っていた。その隣には赤髪の少女。

「ん?アレンじゃないか。最近はあまり話す機会がないが、何かあったのか?」

「いや、実は――――」


 アレンが苦々しい顔をして語ったのは俺についての事だった。

 要約すると、アレンの周りの取り巻き達が俺と関わるのに猛反対して中々俺と対面させてくれなかったらしい。

 つまりは『レヴィはやばい奴だからマジでやめとけ!殺されるぞ!』という事である。いや、殺す訳ないだろ!と叫びたい気持ちにならなくもないのだが、それと似た様に誇張された噂も多いので、それらを聞くうちにいい加減ツッコむ気も失せてきた。

「ごめんね。レヴィは何も悪く無いのに。噂だけが一人歩きしているだけなのに。」

「おいおい、なんでアレンが謝る必要があるんだ?悪いのは誇張した噂を流したヤツ、そしてそれを許した俺自身じゃないか。」

「……レヴィは強いんだね。カッコいいよ!」

 …え⁉︎カッコいいなんて言われたの何十年振りだろ!超嬉しいんですけど!

 前世での俺の一生は、おっさんだ、おっさんだと虐げられる人生だったからな。

 一番心に刺さったのは、コンビニのレジで小銭を探してる時に後ろのJ Kに言われた『ねぇ、おっさん早くしてくんない?というか臭いんだけど。あ、加齢臭か。ウケるー』の言葉だろうな。

 あれは死ぬほど痛かった。心が。心臓に手を当ててその場に崩れ落ちた記憶がある。俺に過去一の大ダメージを与えた攻撃だ。 

 「そうか。ありがとう。」

 だがしかし!俺はその嬉しいという衝動を顔には出さず、よりクールな感じを醸し出していく!本当に褒められ慣れている男というのは、ちょっとした褒め言葉で狼狽えなどしないのさ。

「どうしたんだい?いかにも嬉しそうな顔をしてるじゃ無いか」

そんな俺に後ろから声が聞こえた。振り向くと、ニヤニヤとしたキリが俺の顔をしたから覗き込んでいるではないか。

コイツ、人を揶揄うのがそんなに楽しいか……!

「……もしかしてキリちゃん?僕と同じ第二職業の!」

そうか、キリとアレンは初対面だったか。

「そうだよ!キミはアレン君でしょ?噂は聞いているよ。近衛騎士団からのスカウトが来たんだってね。あと、キリって呼んでいいよ!」

「分かった!……そういうキリも僕と同じ第二職業なのに、スカウト来なかったの?」

「来なかったね。僕の職業は少々欠陥しているのさ」

「ふぅん。同じ第二職業なのに全然価値が違うんだね!」

……アレンよ。一般的にそれは皮肉って言うんだよ。彼はまだ子供だろうから、純粋に思っただけなんだろうけど。

「ほらアレン!いつまで話し込んでいるつもりよ!」

そこに介入する赤髪少女、フレアである。

ちなみに俺の脳内翻訳機を使うと、

『そんな女と話してないで、私と話しなさい!』

と翻訳された。あら可愛い。

 フレアに睨みつけられました。はい。

 彼女はアレンの腕を引っ張って連れて行こうとする。

 残念そうにしているアレンには悪いが、俺たちもそろそろ人形作成に戻りたいと思っていた所なんだ。また、話す事にしようぞ。さらば!







 

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