長きにわたる兵役を終えて故郷の村に帰ってきた青年ヘンリー。疲れ果てていた彼は「俺はしばらく働かない」と報奨金を妹に渡し、妹もそれを優しく受け入れる。それから10年。本当にまったく働かず酒ばかり飲んでいたヘンリーはついにキレた妹に家を追い出され、流浪の旅に出ることに……。
とにかく主人公のヘンリーのダメっぷりが凄まじい本作品。どのくらいダメかというと、盗賊に襲われた馬車を見つければ盗賊の足跡を追ってアジトに侵入し、そのまま仲間の振りをしてタダ酒をたかるし、冒険者ギルドを訪れては特に仕事は受けず、酒を飲んで若い冒険者にウザ絡みしてばかり。うーん、この酒クズ……。
常に酒浸りで言動が小物っぽいヘンリーだが、時々戦争帰りならではの異常な鋭さを見せる。この普段のダメ人間っぷりと荒事に巻き込まれた時のハードボイルドな姿がギャップが非常に強烈でカッコいいのだ。
また、彼を取り巻く冒険者や騎士団の人たちも彼に負けないぐらいアクの強い連中がそろっており、ヘンリーとの彼らのやりとりが大変面白い。最初の数話を読んでこの酔っ払いに魅力を感じたら最後、そのまま一気読みしてしまう勢いのある一作だ。
(「酒は飲んでも飲まれるな!」4選/文=柿崎憲)