猫のミーヤとフクロウのルフト
ケイティBr
宵闇のルフト(空)
アタシは猫のミーヤ、心細げな街灯の下、古い石畳を歩いているわ。
この世に生まれてから住んでいたトリアの街、この日も夜の静けさがいつも通り外路地を包んでいたの。
そこでアタシは、母さんの跡を探したわ。
いつも代わり映えしない夜、その筈だったけど。今夜だけは何かが違うとアタシのピンっと立った耳が感じていたの。
――すると空から、ひときわ大きな影が降りてきたってわけ。
「こんばんは、
彼の瞳は、不思議な色をしていて、まるで何世紀もの知恵を秘めているみたい。
「
その時のアタシは一瞬たじろいだけど、すぐに気を取り直して「はい。でも、どうしてアニャたがそれを……?」
「私は今まで長く生きてきたんだ。その中で、君のような者と数多く出会った。私なら
「でも、なんでアタシを助けたいの?」アタシは不思議に思ったわ。
「だって、人助けは面白いじゃないか!」とルフトは笑いながら翼を広げた。彼の声は、夜空に浮かぶ星のように明るく輝いていたわ。
「私の名前は、
「アタシは、ミーヤ。ただのミーヤよ。よろしくね。ルフト」そう言いながら、アタシはルフトの翼に頬を寄せて彼の提案に応じたの。
「では、行こう
アタシは、ルフトの白い翼を追って駆け出したの。
二人で、駆けるトリアの街はいつもと違って輝いて見えたわ。
ルフトが、街灯に近づくと彼の不思議な力が働いて、光りがまばゆく輝いてアタシを導いたの。
段々とアタシの足音は、トリアの夜に溶け込んで行って、やがて街灯の無い平原に出たわ。
すると輝くばかりの星空がアタシの視界を埋め尽くしたの。
「ねえ、ルフト。こんなに美しい場所がすぐ側にあったなんて、アタシ、知らなかったわ」と息を切らせながら言ったわ。
アタシの瞳は、新たに発見した世界の輝きでいっぱいだったわ。
立ち止まったアタシの隣にルフトは舞い降りて、宝石のような空から目が離せないアタシの耳元で囁いたの。
「
その言葉にアタシは少し考え込んだ。そして、母さんがいつも子猫だったアタシに語りかけていたことを思い出したの。
「世界は美しいわ、ミーヤ。だから、どんな時でも希望を失わないで」
「ルフト、アタシ……アタシ、母さんの言葉を思い出したの。アタシたち、本当に
するとルフトは静かに翼を広げ、深い夜空を見上げながら言ったわ。
「
ルフトに励まされたアタシは再び歩き出したわ。
――トリアの街を離れ、さらに未知の地へと足を進めたわ。
自然とアタシとルフトの間には、絆が芽生えていたわ。
そんな時、アタシたちとは別の一匹と一羽とすれ違ったの。
彼らは、白く太ったネズミと黒いハチドリのコンビだったわ。
「やぁ、二人とも今日は、いい夜だね」「チチチッ」白ネズミが帽子を取って挨拶をすると、ハチドリが羽ばたいて音を鳴らしたの。
「そうね。今日はとてもいいことが有る気がするわ」アタシも頭を下げて挨拶を返したわ。
「
「うん。そうなんだ。僕もそろそろ此処に来れなくなるからね。最後かもしれない」帽子を被り直した白ネズミは、角度を決めてそう言ったの。
「そうか、
「君もね。ルフト、では二人とも、また何処かの夜会で会おう」胸に手を当てて白ネズミは挨拶をし去っていった。彼の背を追うようにハチドリはチチチと音を鳴らしていったわ。
「ルフト、彼らは一体誰なの?」
「
この時の、ルフトが言った天国は、今までの
そのことが急に怖くなったけれど、振り向いても、もうトリアの街の光が見えなくなってたわ。
アタシの足が重たくなり、地面から離れなったけれど。ルフトは自身の翼で、アタシを包みこんで励ましてくれたの。
――再び歩き出して、夜が更けていく中。
アタシたちは、川沿いにある古びたお城にたどり着いたわ。
ここは人々から忘れされた城なんだって。
「
アタシは深呼吸をして、ルフトの翼に再び触れたわ。
「準備はできてるわ。ルフト、ありがとう。アタシ、母さんに会える。そう信じてる」
アタシが頷くと、ルフトは翼を古びた城の門を指し示したの。
でも彼は、その場から動かず佇んでいたわ。不思議に思ってアタシは首を捻ったの。
「
「ルフトは来てくれないの?」
「あぁ、私には今、会いたい人は居ないからね。でも心配は要らない。ここは
城の中は荒廃していると思いきや、内部は星の光で満たされていたわ。
まるで天井がないかのように、上を見上げると無数の星が壁面で輝いているの。
この場所は、世界とは切り離された、時間が止まったような空間だと感じたわ。
アタシは息をのんだ。こんなにも美しい場所が、この世に存在するなんて。
そして、この場所がアタシを待っていたかのように感じたわ。
まだ小さな心が、不安でいっぱいだったが、同時に大きな期待と希望で満たされていたの。
すると突然、穏やかな光がアタシを包み込み始めたわ。
光は温かく、心地よくて。その奥から、優しい声が聞こえてきたの。
『ミーヤ、私の可愛いミーヤ。ここに来てくれて、ありがとう』
アタシの目からは、止めどなく涙が溢れ出たの。
「母さん……会いたかったのよ」とアタシは声を上げた。その声には、長い間抱えていた悲しみと喜びが震えて混じり合っていたの。
母の声は再び響いた。『ミーヤ、私はいつもあなたの心の中にいるわ。あなたが見る世界、感じる愛、すべてが私たちを繋いでいるの。忘れないで、私たちの絆は永遠よ』
母からの真心の贈られた言葉は、アタシの心に染み渡って、体の中まで染み渡ったの。
それは尻尾まで、行くとピンっと跳ね起きたわ。
「ありがとう、母さん。ねぇ、心細くなったらまた来ても良い?」
「えぇ、もちろん。いつでもいらっしゃい。私のミーヤ」
アタシは、母さんとの話しに夢中になって、今までトリアの街で行っていた冒険を話したの。
その一つ一つに母さんは相槌を打ってくれて、アタシの尻尾はずっと揺れていたわ。
そんな夢の時間もやがて終わりを告げるのよ。
「ミーヤ、そろそろ帰りなさい。夜が明けるわ」その声は、先程までとは変わって悲しみを帯びていたわ。
「母さん、ここに住めないの?」アタシは、何故かそれが叶わないことを知っていた。けれど聞かずにはいれなかったの。
「ダメよ。ミーヤはまだ来る所じゃないの。いい子だからトリアの街に帰りなさい」母さんの声は、優しかったけれど、その中には強い意思を感じたわ。
「うん。また来るね母さん」アタシは、後ろ
その間ずっと、母さんの温かい視線を感じていたけれど、振り返っては行けない気がしたの。
「
「ありがとう、ルフト。あなたがいなければ、ここまで来られなかったわ」と体を伏せながら感謝を示したの。
「いいんだよ、
見るとルフトの瞳に映る星の光は、かつてないほどに輝いていたわ。
それは、太陽の光よりもアタシには大切に思えたの。
彼に見つめられると、アタシの心に羽が生えたかのようだったわ。
「では、帰ろう。
「うん。今日はありがとう。ルフト」
太陽が赤く空を染める時、アタシとルフトの冒険は終わりを告げたわ。
今日、ルフトと共に過ごした
アタシは、明けの『
おわり
―――――――――――――――――――――――――――
あとがき
KAC20246 お題トリあえず
トリと共に会いたい人と実際には会えて無い。
をテーマにしました。
するとあら不思議、童話作品になりました。
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それでは、また別の作品で会いましょう。
猫のミーヤとフクロウのルフト ケイティBr @kaisetakahiro
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