第6話 芽生える友情
夕方。
学校の課題をやって、買ったばかりの『Stella』をじっくり読む。
りりかちゃんのページはもちろん、まゆちゃんに、先輩モデルたちのページ。
……はあ、なんて幸せなんだろう。
その時、携帯が鳴った。
誰だろう、と開くとなんとりりかちゃんからだった。
心臓がドクン、と跳ねた。
「ええっ!?」
実は、さっきカフェで連絡先を交換した。
恐れ多くて交換するだけなのに緊張したよ。
震えながら携帯をとり、チャットアプリを開く。
『由奈って進路決まってる?』
……まさかの進路の話。
時期も時期だ。
そろそろ確定しないといけない。
キーボードを打つ手が震える。
「なんとなくは決まってる」と返信する。
あー、今のそっけなかったかな。
すると、すぐに返事が来た。
いや、早すぎない?
『そっかー。近所の高校教えてくれない?どこがどこなのかよくわからんくてさ』
うーん、近所の高校か。
まあ。公立から説明していこう。
「市立宮津、市立宮津東、県立宮津西、県立宮津北、県立宮津南の順に偏差値が低くなる。うちの中学からは市立宮津、東に行く子が結構多いし、倍率も高い。残りの3つは普通って感じ。一番近いのは市立宮津、一番遠いのは南」
次は私立。
「紅丘学院が圧倒的に併願で受ける子が多い。もう1個が隣町の城川にある城川学園。紅丘より偏差値は高いし、周りはお金持ちだらけ」
私は行くなら宮津西高校だ。
私立は紅丘学院。
市宮や東はレベルが高すぎて私には無理だ。
『ありがとう!助かった!!』
というメッセージに続き、可愛い猫のスタンプが送られてきた。
リアクションボタンを押して、スマホを置く。
はあああああああ、緊張した!!!!
だ、だって、推しだよ??
推しと連絡先交換して、しかも相手から連絡が来るんだよ!?
緊張しないわけがないよ!!
しかも、私に進路のことを聞いてくれた。
てっきり、いつものグループの子達に聞くのかと思ってたから。
不意に脳裏にあのグループのことが浮かんだ。
ニヤニヤしながら私を見て、トゲのように刺さる陰口。
「……はぁ」
携帯を閉じ、『Stella』に視線を戻す。
別に、いいもん。
あんなの慣れてるし、私には推しのりりかちゃんがいる。
……それで、いい。
すると、また携帯の通知音が鳴った。
「ま、またりりかちゃん!?」
わわわわわわわどうしようどうしよう。
恐る恐る携帯を取り、りりかちゃんとのチャットルームを開く。
『由奈さ、何かあったらなんでも相談してよ? 直接が無理ならこうやってチャットでも話せるんだから』
……神ですか、あなた様は。
心臓のバクバクが止まらない。
嬉しさと同時に心が一瞬、痛んだ。
嬉しい、んだけど……
高速で「ありがとう」と打ってスマホを閉じ、ベッドに潜る。
「……いいんだ、別に」
私は、りりかちゃんを推せるだけでうれしい。
別に……わざわざ連絡先を交換して、チャットをするまで仲良くなれなくたっていい。
――1人を貫くって、決めた。
それなのに……どうして、りりかちゃんは私にこうやって接してくれるんだろう。
どうして、ほっといてくれないんだろう。
嬉しいのに、なぜか辛い。
こんなうれしいこと、他に無いはずなのに。
Let's Go To "Stella"! 陽菜花 @hn0612
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