第5話 新刊
りりかちゃんが転校して1週間が経った。
すっかり馴染んでいる。
たまに他のクラスの人たちがうちのクラスに遊びに来て教室は騒がしくなる。
そして、今日は9月15日。
Stellaの発売日!!
Stellaは毎月15日に発売される。
月に一回、この日だけを楽しみにしている。
買い始めてもう半年経つのか……
りりかちゃんを動画で見て、雑誌を初めて買ったのが今年の3月だから。
本屋に行って、雑誌コーナーへ。
大人向け雑誌や子供向けの雑誌もあってちょっとワクワクする。
Stellaの表紙の文字は金色の文字に紫の縁があってまわりに星の模様。
すごくおしゃれなフォントだよね。
あった!!
今月の表紙は……天野まゆちゃんだ!!
ええ、可愛い……!!
控えめに微笑んでいるまゆちゃんはやっぱり儚くて、ガラスみたいに透明で、繊細な雰囲気がある。
パラパラページを開くと、すぐにりりかちゃんを見つけることができた。
りりかちゃんがファッションのページに載ってる!!!
しかも秋コーデ特集の!!!
……そっか、もう秋なんだ。
まだまだ暑いから夏気分だった。
秋コーデと言ってもがっつり秋!って感じじゃなくて、ちょっと涼しげな秋コーデの特集。
りりかちゃんは銀色のボタンがついた黒いショートパンツに、秋色のチェック柄のルーズなカーディガンを着ていてすごく可愛い。
ちょっと韓国っぽいかも。
韓国ブランドの服を使ってるのかな。
最近韓国系のファッションがすごく流行ってて、Stellaのファッションページによく載っている。
私には着こなせないや。
りりかちゃんのコスメページ。
『La♡La』の新作だ!!!
オレンジ×ブラウンでちょっと秋ぽくて、パレットが紅葉みたいな形をしている。
はあああああ……りりかちゃん、可愛いよぉ……
尊い。
ものすごく尊い。
一生拝みます。
よし、買おう。
雑貨を閉じてレジに向かおうとした時だった。
「あれ、えっと……橋立、さん……?」
……えっ。
短い肩までの黒髪の背が低い女の子がいた。
黒い眼鏡に、帽子を深めにかぶっている。
私を見て、私の名前を呼んだ。
あれ、会ったことあるっけ。
何で名前を知っているんだろ。
私が瞬きをすると、その子は少し笑った。
「あー……変装してるからかな。これ意外と役に立つね〜」
その子は眼鏡をくいっと押し上げたり帽子を触ったり。
その子の顔をじいっと見た時、時が止まるような感覚がした。
「も、もももしかして……りり、むごっ!?」
「本屋だから静かにね。外で待ってるから先にそれ買ってきなよ」
パチっとウインク。
わああああああああ!?!?!?
うそぉ!?
何でここにりりかちゃんがいるのぉ!?!?
しかも今のウインク!?!?
昇天だああああ!!!
「り、りり、りりかちゃんで間違いないでしょうか」
静かなカフェ。
りりかちゃんおすすめの場所らしい。
「そうだよ!」
わあぁ……尊い……
推しが……目の前に……いる……!!
「自己紹介した時からずっと私のこと見てたでしょ」
「う、うんっ……推し、だから……」
「えー嬉しい。彩花たちは違うからちょっと寂しかったんだよね」
……りりかちゃんは一軍女子と仲が良い。
きっとりりかちゃんがものすごく性格が良いから苦手とか何も感じないんだろうな。
「……そう、なんだ」
「ごめん、彩花たちの話しちゃって」
「えっ?」
店員さんがカフェラテを机の上に置いてくれた。
「言ったらまずいけど、あの人たち陰口すごいし、聞こえるように言うから……橋立さんも聞こえてるでしょ?」
「……うん。でも気にしてない。あんなのしょっちゅうだから」
「……そっか……ごめんね」
そう謝ったりりかちゃんの表情は彼女らしくなく、すごく暗かった。
何でりりかちゃんがこんな悲しい表情にならないといけないんだろう。
Let's Go To "Stella"! 陽菜花 @hn0612
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