第4話 一軍女子
中3の2学期は進路を確定しないといけない。
りりかちゃんはどうするんだろう。
来たばかりだけど、決めないと先生に色々言われる。
きっと、オープンハイスクールも行けてない、よね。
なんてことを考えながらお昼ご飯。
周りは友達と机をくっつけて食べたり、他のクラスに行ったり、校内のどこかに移動して食べてる。
この時期はまだ暑いから教室で食べる人が多い。
私はもちろん1人。
その方が自分のペースでゆっくり食べられるし。
人の話を聞きながらご飯を食べることが私にはできない。
ご飯を食べる時はご飯を食べることだけに集中したい。
「りりかってどこの中学にいたの?」
「琴ヶ丘ってとこ知ってる?」
「あ、城川の隣の隣のとこ?」
「そうそう。かなり田舎だよ」
「そうなんだ?行ったことないけど、よくテレビで自然が綺麗って言ってた気がする」
「たしかにそう…かもだけど、隣城川だよ?もう差がありすぎて」
りりかちゃん、琴ヶ丘に住んでたんだ……
あそこ、海が綺麗で夏休みとかに行ったことある。
空気も美味しかったなぁ。
「でも城川民の別荘とかがたまにそこにあるんでしょ?」
「あったあった!夏休みとかにもうお金持ち!って感じの人見かけてびっくりしたもん。こんな田舎に城川の方がいる……!って」
城川市ってめちゃくちゃお金持ちの街だ。
私の親戚が城川市に住んでていて行ったことあるけど、やっぱり違う。
都会どころか、ぜんぶ神々しくて私のような一般庶民が入っていいのか戸惑ったもん。
「てかりりか、あの橋立って言う子気をつけた方がいーよ」
自分の名前が聞こえて一瞬固まる。
「どうして?」
「あの子平気で人の話無視するもん。気分悪くない?」
「それなー。目つき悪いしさあ」
「そんなんだからぼっちになるんだよー。みんな関わりたくないって思ってるんよ」
「顔はちょっと可愛いのにね」
「はぁ?可愛くないでしょ」
「声大きいって!本人に聞こえちゃうよ」
「えー?事実だし、自覚してるでしょ」
「かわいそ」
「ご、ごめん手を洗いに行ってくるね!」
りりかちゃんがガタッと席を立つ。
「「「「いってらっしゃーい」」」」
何事もなかったかのようにまた会話を続ける4人組。
別に陰口言われるのは慣れたけど、りりかちゃんがいるところで言われたくなかったな。
今の聞いてりりかちゃんはどう思ったんだろう。
いつも気にならないのに今日は何だかイライラする。
はあ、疲れた。
「みんなってこれ応募する?」
「Stellaのオーディション?まさか〜」
「彩花は?」
「もちろん応募するに決まってる」
……Stellaのオーディション。
最近発表されたばかりだ。
毎年何万人にも応募者がいて、その中で3人か4人しか選ばれない。
動画もアップされるから大注目されるし、トレンドにもなるくらい人気だ。
へえ、それにあの一軍女子が出るんだ。
ある意味楽しみかも。
「彩花が出るなら私は良いかな。彩花だけを応援するもん」
「それいいねー!」
「彩花、頑張ってね!」
「もちろん。絶対に受かってみせる」
オーディション動画は主に第二次審査の面接の動画がアップされる。
見た感じ、個人面接みたい。
その様子が投稿されて、視聴回数とかも視野に入れて合格者を決めるんだって。
面接の中には特技披露とかもしないといけないから、そこが1番注目されるんだって。
ちなみに、りりかちゃんはバレエを披露していたよ。
「仮にあの子が応募したらどうなるんだろうね」
また視線を感じる。
「絶対落ちるっしょー」
「面接まともに話せなさ、」
「ただいまー戻ったよ」
りりかちゃんが戻ってきた。
「「「「おかえりー」」」」
「なになに、何の話してたの?」
「Stellaのオーディションの話」
「あー。オーディションね、先週応募始めたんだよね。みんな応募するの?
「まさか。彩花は応募するみたいだよ」
「へぇ、そうなんだ」
お弁当箱をしまい、次の授業の用意をする。
Stellaのオーディション。
一時期は考えてたけど、応募する気にはなれないな。
あんな可愛い子たちの中に入れるわけがない。
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