第9回 威療士枝部

「おかえり~。ロカ、エリーちゃん、お疲れさま」


「お、ルー、また例の“多次元通信”か」


「そうそう。資料を探してたの。……ネクサス枝部のミーティングはどうだった?」


「まあ、いつも通りってやつだな」


「そう。じゃあ、なんか、エリーちゃんが膨れてるのって……?」


「もう! ハリハリの話、長すぎだってば!」


「あらあら。やっぱりそういうことだったのね」


レンジャーコード威療士規則とか、〈ドレスコード〉の手順確認とか、もう頭はいってるし。てか、わすれないでしょ、レンジャーなら」


「それが一番だがな、再確認も大切だぞ、リエリー? 俺たちは、命を扱ってるんだ。どれだけ再確認したって足りないさ」


「でもさ、わざわざネクマスが毎週、言う? ハリハリ、暇なの?」


「こーら、エリーちゃん。ジョンがどういう人か、アナタがいちばんよくわかっているでしょう?」


「わぁってるよ」


「じゃあ、二人とも、これ見てよ。懐かしい映像が出てきたのよ」


「ん? 『新ネクサスマスター枝部長・ジョン・ハリス就任演説』、か。よく残ってたな、ルー。黒歴史だとか言って、ジョンが全部処分したはずじゃなかったのか」


「ふっふ。ワタシはレンジャー随行支援機よ? デジタルデータの扱いじゃあ、ジョンも敵わないわよ」


「てことは、ルーがハックしてパクって――」


「――こほん。さて、それじゃあ、みんなで見てみましょ。レンジャーネクサスを熱く語るジョン・ハリスが見られるわよ~」


『――レンジャーネクサスとは、単なる司令センターではない。“連結体ネクサス”の意味合いが示す通り、ここは、あらゆる生命と情報、そしてレンジャーを結び付ける場所だ。われわれネクサスが、助けを求める市民とレンジャーを結び、ひいてはそれが命を繋ぎ止める。だが、機械的な繋ぎ役であってはならない。東洋にはこんな言葉がある。“エニシバンド”だ。エニシは、ただ人と人とが繫がることだけを意味しない。そこには、エニシによって繫がった人の幸福も含まれる。われわれカシーゴ・レンジャーネクサスは、このエニシ的働きを目指す。ネクサスによって繫がったあらゆる人々が、いっそうの幸福を感じる社会の実現に向け、われわれはこれからも前進し続けるとここに誓う』

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『威療士/レンジャー・ファミリー』の登場人物がメタ的に用語解説していくショートストーリー ウツユリン @lin_utsuyu1992

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