第3話

 「お兄ちゃん学校遅れるよ」と妹が言う。


 「もうそんな時間から、昨夜も遅かったからな」と僕が呟く。


 妹は小学生で、僕達は親戚の家に預けられている。僕は高校生なので卒業したら、自立しようと思っている。自立といっても自分達が食べていく収入は僕が観光客に沖縄リゾートを紹介する事で生計を立てている。昨晩もお客様がナイトクルーズを楽しみたいというので、僕が知っているとっておきの場所に案内した。僕達の両親が元々、同じ仕事をしていたので、幼い時から付いて回っていた僕は自然と仕事を覚えたのだった。


 妹が「トーストを焼いて、ベーコンエッグと牛乳を作り置きしといたから」と2段ベッドの下から声を掛ける。


 「私、先に学校行くね」と玄関先にいる友人に合図を送りながら、ベッドの梯子にアイロン掛けした制服シャツを掛けた。


 僕はそれに気づくと「いつもありがとな」と返事をした。


 しかし、妹の姿はなく、楽しそうな笑い声だけが部屋に残った。僕は少し頭痛がするので風邪でもひいたかなと思いながら、ゆっくりと布団から身体を起こす。時計を見るとバスの時間まで20分しかなかった。僕は友人に遅刻のメールを打つと時間迄、二度寝する。妹の作ったトーストを牛乳で流し込むと、弁当にご飯とベーコンエッグを詰めた。これで昼食も済ますのだ、この事は妹には内緒である。余計な事を言うと、弁当まで作りかねないからだ。本当に出来た妹なのだ、恐らく母親に似たのだろう。

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