状況確認と練習と帰宅
.。o○
2人は助けた子の両親に会いに行くのだが…その前にやることがあった。
「度付きゴーグルじゃなくて眼鏡にしてきたらどうだ。怪しまれるかも」
「あっ…助けようと夢中でずっとこの状態でした。眼鏡にしてきますね」
瑠璃は眼鏡を取り直してきた。流石に素顔が見えないと怪しまれかねない。
気を取り直し、助けた子の両親に会いに行くことになった。
「ありがとうございます!本当にありがとうございます!」
「ああ…」
「あり…がとうございます」
2人は両親に握手されていた。助けようとしたからだそうだ。子は無事で全く問題ない。瑠璃は父親に、翠夢は母親に。
瑠璃は少し恐れていた。それを感じたのか、翠夢は先に話し始めた。
「ちょっと、握手を止めていいですか?もう十分ですよ?」
「あ、そうですね。子供を助けてくださいましてありがとうございます」
「他の救助した人もいるんだ。そちらの方が活躍している」
「その人たちにも話しました」
気になっていたので、助けた子供にも話してみる。お礼はもちろんだが、ちょっとした世間話をする。この子供は男の子で、小学4年生だと言う。
「僕、25m泳げるから、5mのプールでも浮けると思った。行けると思ってた」
「5m…いわゆるダイビングプールは深いぞ。下を見るとびっくりするかもな」
「いや、そうじゃなくて。飛び込もうとしたら滑っちゃって」
「走ってたの?プールサイドで走るのは…」
「走ったわけじゃないよ。滑っちゃってそのままわからなくなっちゃって」
これを聞く限り、やりたいことが頭に残った結果ああなったんだろう。恐らくこのプールで潜って泳ぎたい。
「今日はまだ、このプールで泳ぐのは難しいと思う」
「なんで?このために僕は」
「水中に落ちた時に対応できなかった。まだ水中での身体の動かし方がわかっていないか、急な状況変化の対応が出来なかった。その状態で1人で泳ぐのは危険だ。多分監視員もそう言うし、お父さんもお母さんもそう言うと思う」
男の子は表情を変えていった…
「僕は!」
「ごめん、お姉ちゃんも同じ意見だけど、練習すれば出来ると思うよ。普通に泳げることよりも慣れておくことが必要なの」
「…じゃあ、お姉ちゃんが教えてほしい。深い所じゃなくても泳ぎたいよ」
「あっ…」
瑠璃は男の子に言われ、少し表情が変わっていく。顔色が…それを感じた翠夢はが、この子はちょっといろいろあって男の人が苦手という話をした。当然、翠夢が突っ込まれることになるが、そこは男の子にとっても、異性で信用できる人が居るということで納得させることが出来た。
.。o○
この後、他のプールで練習を始めることとなった。勝手に考えた内容としては、1、水中での宙返り、前転と後転。2、息継ぎなしでの水泳25m。3、静止しての息止め、4、水中での泳ぎであった。
もっとやることはあるが、それはあのプールでの梯子を使わないと練習しにくい。すぐにやると言うのは難しかった。
男の子は、水中での泳ぎは何とか及第点と言えたが、他は瑠璃に勝てなかった。25m水泳は息継ぎがあれば立派にこなせていたが、なしでは年齢的に難しかったのだろう。それでも、練習して息止めは家でも出来る。
.。o○
そんな練習を続けている内に、両親に言われ、帰ることになった。
「お兄さん、お姉ちゃん、また会おうなー」
「出来ることを進めていこう!」
「また会いましょうねー」
.。o○
男の子が帰った後、2人は…最後に、深いプールに移動し、また泳ぎ始める。
底までたどり着いた2人は…今回だけ、マスクとシュノーケルを外し、息の続く限り、お互いの唇を貪った。今回だけ…
.。o○
浮上後、2人は泳ぎ疲れ、
「帰るか?」
2人は、さらに近く、仲良くなっていた。そして、男の子とのちょっとした練習で、瑠璃の不安も、解消されつつあった。
男の子とは、また会う日も作ってある。きっと大丈夫。2人の仲は、今回のプールのデートで、プールの深さと同じくらい深くなった。
プールデート:2人の心の距離 .。o○ ~翠瑠璃外伝~ アフロもどき @ahuromodoki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます