エピローグ いつかまた会える日を願って。

エピローグ いつかまた会える日を願って。

 死の森改め、妖精の森から出て数日が経った。

 私たちは今、綺麗に整備された街道を歩いている。見えるところは全て草原、遠くには山が見える。


『ねぇ、エヴァ。妖精さんが来たよ』


 ノクティの言った通り、ふわふわとした黄緑色の光が二つ近づいてきていた。

 緑系統の光……、風の妖精かな?


 妖精の森を出てから、数々の妖精が私たちに会いに来るようになった。

 ノクティを救ったことを感謝されたり、祝福をされたりと、妖精たちの用件は決まっている。今回もそうなのだろう。


『わー! 愛し子と救援者だー!』

『落ち着きなよ、ウェル』


 ふたりの妖精は手のひらサイズの人の姿をとっていた。レジーナさんと同じく耳が尖っており、蝶のような羽が生えている。

 てっきり普通の妖精は人のような姿を持たないものと思っていたから驚きだ。

 今まで人の姿をとった妖精には会ったことがなかった。もちろんレジーナさんを除いて。


『君たちは風の妖精さんなの?』

『そうだよ! 私はウェルヌス! そしてこっちが……』

『僕はウェントゥス、ウェルの兄。よろしくね、愛し子』

『こちらこそよろしくね。それとボクの名前はノクティだから、そう呼んでもらえると嬉しいな』


 背中まで髪を伸ばしている子がウェルヌスで、肩口で髪を揃えている子がウェントゥス。ふたりはとてもよく似ている。

 じっとふたりを見ていると、ノクティに尻尾で頬を突かれた。

 ……あ、私も自己紹介しないと。


「私はエヴァ・クレプスクルム。よろしくね、ウェルヌス、ウェントゥス」

『『よろしく(ね!)』』

「ところで、ふたりはエヴァとノクティに何か用事があるのかな?」

『あっ! そうだった! 愛し子……、じゃなくてノクティを救ってくれてありがとう!』

『ありがとう、エヴァ』


 感謝を伝えられるたびに思うけど、あれはやりたくてやっただけなんだよね。でもやっぱり、ありがとうという言葉は嬉しい。


「ふふ、どういたしまして」

『うん。……そして』


 ウェントゥスとウェルヌスは息を合わせて言う。


『『——愛し子ノクティと救援者エヴァに、心からの祝福を』』


 きらきらとした黄緑色の光がノクティと私を包み込む。

 ……あたたかくて優しくて、とても心地良いな。まるで春に吹く風のよう。


 しばらくするとその光は収まった。


「……祝福をありがとう」

『ボクからも、祝福してくれてありがとう』

『うん! それじゃあ私たちは行くね!』

『いつかまた会える日を願って。またね』


 ふたりは風のように去っていった。

 ……いつかまた会える日を願って、か。そうだね、素敵な妖精さん。


「さて、そろそろ行こうか」

「うん。ところで父様、今はどこに向かってるの?」

「この街道の先にある『イコーリティ』という国に向かっているよ」

「イコーリティ、どんな国なんだろうね」

『気になるね』

「ふふ、それは行ってからのお楽しみ——」




 時に出会い、時に別れ、時に笑い、時に泣き……。

 きっとこうして私たちの旅は続いていく。

 父様とノクティと一緒に、これからも旅ができたらいいな。


 世界を見て回る旅は、まだ始まったばかり。

 アエテルニタスを巡る旅は、まだ始まったばかり。

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永遠が終わるその日まで、きっと私は旅をする。 色葉みと @mitohano

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