れいとうきりみ

 木の板に杭が刺さっている。


 その杭の刺さり具合は区々である。


 板の前に、一人の男が金槌を持って近づく。杭たちはいまから何をされるのかと言わんばかりに震えている。


 男は金槌を振りかざし、杭を一つずつ打ち始めた。


 すると、たちまち杭たちは木の板に食い込んでいき、判別するための自身の板からの長さがなくなっていく。


 男の耳には杭が苦しむ声なぞ聞こえない。ただ心ゆくままに叩いている。


 やがて全ての杭が天辺まで食い込むと、男は満足したかのようにため息をして板を持ち運んだ。


 こうしてまた一つの家が完成する。




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れいとうきりみ @Hiyori-Haruka

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