『カメを放さないで』

星之瞳

第1話

友達と下校していた僕は川の岸で作業をしている人を見かけた。

「あれ~田村のおじさんだ。お~い!おじさん何してるの?」

僕は、田村さんの方に駆け寄った。

「市川また明日な」友達が叫ぶ。

「バイバイ、また明日」僕は友達に声をかけ、田村さんの所に行った。


「あぁ、市川ンとこの坊主か。立札を立ててるんだよ」

「立札?」

「ああそうだ、よし、これでいいだろう」

「え、『カメを放さないで』って、どうゆうことこれ?」

「お前ミドリガメは知っとるか?」

「うん、縁日でカメ釣りとか見たことあるから、かわいい亀だよね」

「そうだ、そのころは小さくてかわいいからよく飼われるんだけどな。毎年大きくなって、飼えなくなった人が川に放したりして増えすぎて困っとるんだ」

「飼えなくなるってそんなに大きくなるの?」

「寿命が40年ぐらい。ほら、鶴亀は長寿と言われるだろう。万年とは言わないが結構長いよな。それに、甲羅の大きさが最大30センチぐらい、体重が3キロぐらいになるらしい。世話が簡単だが、年月が経つにつれて大きくなって飼えなくなるって訳だ」

「え!そんなに大きくなるの!!知らなかった、それじゃ飼えなくなるのもしょうがないんじゃ」

「でもな、飼えなくなったからといって、川や池に捨てる人が増えて困ってるんだよ。ミドリガメ、正式名称を『ミシシッピアカミミガメ』というんだが、繁殖力が強くてな、前から住んでいた生物たちを駆逐してしまって生態系が変わってしまうんだ。だから今は家庭でペットとして飼うのはいいが野外に放すのは禁止されているんだがな」

「でも、この看板を立てなくてはいけないってことは」

「そうさ、こっそり放すやつがいるってことだ。まあ、看板を立てたから効果があるかはわからないが、方法が無いんでね。禁止されているっていうのもあまり知られてないしな、一度飼ったら最後まで責任持ってほしいよな。でも40年生きたら、飼い主の方も歳を取るし、全国でまだかなり飼育されているっていう話だからどうなるんだろうな」

「本当だね」

立てられた『カメを放さないで』の看板の前で僕は田村さんとそんな話をした。


明日友達にも教えてやろう。僕はそう思った。







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『カメを放さないで』 星之瞳 @tan1kuchan

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