灼けた匂いの花束を
シェフィア
1章 1作戦目 新人
電子音が響く
全ての音が遠い、息苦しい
うっすらとぼやける視界を少しづつ広げる
「おはよう、気分はどうだ?」
隣から声を掛けられ、視線と耳を傾ける。
「仲間が倒れてるお前を見つけてな、放置するのも忍びないからと連れてきちまったんだよ。」
身体中が痛むが、何とか体を起こす、そして何かを聞こうとして……声が出なかった。
「…………っ!?」
「状況的に手榴弾を食らったらしいな、運悪く破片が喉にまで刺さって、血管は避けていたが声帯に後遺症が出ちまうらしい。悪運は強いんだな」
物は食えると剥いていたリンゴを投げ渡されたが、それどころでは無い。声だけではなく名前
いや、記憶の殆どが思い出せないのだ。
「お前さん、名前は?」
リンゴを受け取らない事に苦笑すると、汚れたペンと紙を代わりに渡される。
文字は覚えていたようで、【分からない】と書いて返した。
「記憶喪失か……私たちはお前さんを助けたが、余裕がある訳じゃない。ここに置いてやる事は出来ない」
その言葉には納得する、しかし殆どの事が分からない以上、このまま追い出されては遠くないうちに放置された時と同じ結果を辿ってしまうだろう。
「だが、戦えるとなれば話は別だ。これ使えるか?」
渡されたのは金色の銃、名前は思い出せないが受け取ると自然と体が動き、弾が込められていないことを確認する。
「その様子だと大丈夫そうだな。さて、お前には2つの選択肢がある。1つはこのままお別れして、自分の幸運を祈ること。」
マガジンを戻し、思い出すように回転させたあと男にそれを返す。
「それか、私たちの仲間になって生きる為に戦う事だ。」
男がそれを受け取ると、代わりにネームプレートを渡してきた。
「私はジョエル、名前が無くては不便だからな。自分で新たな名前を考えてくれ、新人。」
灼けた匂いの花束を シェフィア @soruna
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。灼けた匂いの花束をの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます