第十二話 エピローグ

 あれから十年。

 わたしはもう二十四歳になった。

 ホワイトフライを継ぎ、社長として、毎日頭を悩ませて、働いている。

 良く考えたら、お父様もこんなに大変な仕事をしていたんだ。

 そして…。

 ”LeAf”と言うファッションブランドの社員でもある。

 ”LeAf”はファッション部のメンバーと江見さんで立ち上げた。

 今は社員もいっぱいいる。

 あれからも江見さんのもとで、デザインを学んだ。

 そして、私はどうしてもとお願いをして、服飾の専門学校へ行った。

 心春先輩のは違う学校で少し寂しかったけれど、たまに会ったりしたんだ。

 そのまま、YOU NOに就職。

 資金が貯まって、LeAfと言うブランドが立ち上がった………!

 

 「おはようございます。心春せ……矢部MD(マーチャンダイザ―)課課長」

 「も――!そんなに堅苦しくしないでっ」

 「円菜~!」

 「アヤちゃ……水井パタンナー課課長」

 「アハハハハ!!」


 矢部社長と水井さんはちょっと笑ってくれた。

 少し不思議に感じている人もいると思う。

 アヤちゃんが水井という名字になっているんだ。

 水井(悠斗)先輩と結婚したんだ!

 お祝いを私の家でしたよ。

 ちなみにMDと言うのは、ブランドのファッションの方向性を決める仕事。

 パタンナーはデザイン画を型紙に描く仕事。


――ガチャッ。

 「悠斗~!」

 「アヤッチ!」

 「「二人合わせてハ―ヤ!」」


 いつもどうり、水井PR課課長が斬新な登場。

 昔決めたコンビ名(?)は今も使っている。

 アハハハハハ……。


 「うるさいですよ」

 「カズキング~!そんなこと言わなくてもー!ぷんすかっ」

 「………………!」


 ああ……。

 鈴木生産管理課課長が顔をしかめている。

 やめてあげたら……。

 私は目を閉じた。

 

 「で、MD課の矢部さんからもらった企画・・・」

 「ああ、お嬢様&紳士、ね」

 「はい、江見取締役社長からオッケー頂きました」

 「ありがとう」

 「俺のPR課も、今どう広告出すか考えてるから~」


 次の企画か……。

 二か月前に会社を作ったばかりなのに、そこまで進んでいるんだ。


 「マドッチ……デザイン課課長白鳥様、よろしくお願い致します」


 ええっ?

 あの、水井PR課課長が、敬語!?

 私は息を飲む。

 夢の中にいるのかもしれない。

 でも、やっぱり現実だ。

 怖い……。

 

 「これ、資料です」

 

 鈴木さんが資料を手渡す。

 お嬢様&紳士……。

 私が一番嫌いだった言葉。

 でも、今は、私の強み。


 「課は違っても、私達はLeAfの一員だよっ」

 「ええ」

 「もちのろん!」


 私は壁にかかった紙を見つめる。

 『LeAf』と言う文字がかかっている。

 【葉っぱのように身近に感じてもらう】と言う思いがこもっているんだ。

 ちなみに私達が柊中学校出身ということにも由来している。

 そして、LeAfが大文字と小文字でバラバラなのは、『個性を大切にする』という意味。

 もういじめられない。

 私を認めてくれる仲間がいる。

 元社長令嬢もとおじょうさまとして、胸を張れる。


 「あ、あと一つありまして…」

 「?」

 「ドリームカラーファッションがありますよね?」

 「うんっ」

 「その実行委員会にあなた達に審査をしてほしいとのことです」

 「「「「っ!!」」」」

 「皆さん、よろしいでしょうか?」

 「もちろんよ!」

 「アヤの故郷だからねぇ~」

 「ノウノウ!LeAfの故郷!もちろんやる!」

 「私もやります!」


 私は曇りなく笑う。

 窓の向こうの空は、青く光り輝いている。

 そこに、五枚の葉っぱが青々と茂っていた。

 

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リーフ~ファッション部とお嬢様~ 石川 円花 @ishikawamadoka-ishikawaasuka

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