第十五話 私色に輝ける場所

 あれから十年。わたしはもう二十四歳になった。

 ホワイトフライを継ぎ、社長として、毎日頭を悩ませて、働いている。良く考えたら、お父様もこんなに大変な仕事をしていたんだ。

 そして…。『paletteパレット』と言うファッションブランドの社員でもある。

 『palette』はファッション部のメンバーと江見さんで立ち上げた。

 今は社員もいっぱいいる。

 あれからも江見さんのもとで、デザインを学んだ。そして、私はどうしてもとお願いをして、服飾の専門学校へ行った。心春先輩のは違う学校で少し寂しかったけれど、たまに会ったりしたんだ。そのまま、YOU NOに就職。資金が貯まって、『palette』と言うブランドが立ち上がった………!

 

 「おはようございます。心春せ……矢部MD(マーチャンダイザ―)課課長」

 「も――!そんなに堅苦しくしないでっ」

 「円菜~!」

 「アヤちゃ……水井パタンナー課課長」

 「アハハハハ!!」


 矢部社長と水井さんはちょっと笑ってくれた。

 少し不思議に感じている人もいると思う。アヤちゃんが水井という名字になっているんだ。水井(悠斗)先輩と結婚したんだ!お祝いを私の家でしたよ。

 ちなみにMDと言うのは、ブランドのファッションの方向性を決める仕事。パタンナーはデザイン画を型紙に描く仕事。


――ガチャッ。

 「悠斗~!」

 「アヤッチ!」

 「「二人合わせてハ―ヤ!」」


 いつもどうり、水井PR課課長が斬新な登場。昔決めたコンビ名(?)は今も使っている。アハハハハハ……。


 「うるさいですよ」

 「カズキング~!そんなこと言わなくてもー!ぷんすかっ」

 「………………!」


 ああ……。

 鈴木生産管理課課長が顔をしかめている。カズキングと言う呼び名、やめてあげたら……。私は目を閉じた。

 いつもの調子だ。本日二度目のアハハハ…………。

 

 「で、MD課の矢部さんからもらった企画・・・」

 「ああ、お嬢様&紳士、ね」

 「はい、江見取締役社長からオッケー頂きました」

 「ありがとう」

 「俺のPR課も、今どう広告出すか考えてるから~」


 次の企画か……。二か月前に会社を作ったばかりなのに、そこまで進んでいるんだ。


 「マドッチ……デザイン課課長白鳥様、よろしくお願い致します」


 ええっ?

 あの、水井PR課課長が、敬語!?

 私は息を飲む。夢の中にいるのかもしれない。でも、やっぱり現実だ。怖い……。

 

 「これ、資料です」

 

 鈴木さんが資料を手渡す。

 お嬢様&紳士……。

 私が一番嫌いだった言葉『お嬢様』。でも、今は、私の強み。


 「課は違っても、私達は『palette』の一員だよっ」

 「ええ」

 「もちのろん!」


 私は壁にかかった紙を見つめる。

 『palette』と言う文字がかかっている。『palette』には【一人一人の個性を大切に、個性を表せる服を作る】と言う意味がこもっているんだ。私が提案した、会社名。


 「あ、あと一つありまして…」

 「?」

 「ドリームカラーファッションがありますよね?」

 「うんっ」

 「その実行委員会にあなた達に審査をしてほしいとのことです」

 「「「「っ!!」」」」

 「皆さん、よろしいでしょうか?」

 「もちろんよ!」

 「アヤの故郷だからねぇ~」

 「ノウノウ!『palette』の故郷!もちろんやる!」

 「私もやります!」


 私は曇りなく笑う。

 昔はお父様に塗られた色で、生活していた私。それがファッション部で、変わった。自分の個性いろを持っていなくて、皆に合わせようと焦っていたけれど、そんなことはしなくて良い。『お嬢様だから』と個性を認めてもらえなかったけれど、ファッション部の皆は認めてくれた。

 私色わたしらしさに輝ける、この場所で精いっぱい過ごしたい!

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私色に染まりたい~ファッション部とお嬢様~ 天虹 円花 @ishikawamadoka-ishikawaasuka

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