パゴタさんと僕

青空常陸

第1話 パゴタさんとパウンドケーキ

今日のお昼

パゴタさんのお弁当は独創的だった。


パゴタさんのお弁当:今日の献立

〇昨日作って寝かせたパウンドケーキ2切れ(ラップで包んである)

〇きんぴらごぼう

〇肉焼売 2個

(下の2つはアルミホイルに包んでいる)


僕:(パゴタさんのお昼を見て)「ものの見事に和洋中。」

パゴタさん:「なんか言った?」

僕:「しかも、もう箱じゃない。」

パゴタさん「なんか文句ある?(イラっ)」


(ちょっと時間をおいて)

僕:「うーん。今日寝坊したんすか。」

パゴタさん:「いや、むしろ早起きしていつもより早く会社来たけど。」

僕:「じゃあ、なんでそんな状態なんすか。(パゴタさんのお昼を指す)」

パゴタさん:「なんか、変?(しれっと)」

僕:「いや、なんちゅうか、見栄え?TPO?なんか、ツッコミどころ多すぎて....」

パゴタさん:「自分の分だから、良くない?」

僕:「いや、別にいいっすけど、パゴタさん的にそれ恥ずかしくないんすか?」

パゴタさん:「(じっと僕の弁当を見て、指をさす)それ、自分で作って、自分で詰めて、自分で最後まで容器洗って乾かして拭いて作ったお昼?」

僕:「いや、母が作ってくれてますけど。」

パゴタさん:「多分、そこやわ。私もお母さんがお弁当を作ってくれる人の事を悪く言うつもりはない。それはその家族がよしとしてれば問題ないし。だからこそ、人のお昼についてつべこべ言わんでもいいと思う。

ついでに言えば、お弁当って持続させるのめっちゃ大変なんよ。今までお母さんが作ってくれてたから知らんかったけど、まず、容器がいるやろ、洗って乾かして拭いて、んで、ある程度のおかずがいる。ご飯はたいときゃいいっていうけど、全部自分ってなるとめんどい。弁当できても、使ったフライパンとか器具とかシンクにあるだけで朝からちょっと嫌な気分になる。それを乗り越えるための今日のお昼なわけよ。」

僕:「なんか違うんですか?」

パゴタさん:「圧倒的に洗いもんが少ない。」

僕:「はぁ」

パゴタさん:「環境に悪いとか、ごみとかはわかってる。だけど、今日の弁当はパウンドケーキを切ったナイフとお皿、焼売チンするときのお皿ととる為のお箸しかない。あとは、まとめてゴミ箱にポイしたらいいだけ。こういう日があるから私は頑張れるわけ。」

僕:「そんな違うもんですかねぇ。」

パゴタさん:「人によると思うけど、多いんじゃない。君が苦にならない性格だったら、うらやましいねぇ。んじゃ。」


そういって、パゴタさんはいつもの巾着袋にコンビニでもらったやつであろうフォークスプーン(パゴタさんはもらうと2個だけストック派)とラップやアルミホイルを綺麗に折りたたんだものをいれ、休憩室から去っていった。


残された僕は、自分の弁当箱を見ながら、今日帰ったら母ちゃんにありがとうって言おうと思った。


追伸:ありがとうと母ちゃんに言ったときに、母ちゃんの指はあかぎれまみれだったので、僕はこの日から弁当箱だけは帰って自分で洗うようになった。

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パゴタさんと僕 青空常陸 @aozorahitachi

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