私の手をはなさないで

三雲貴生

一話完結

 痛恨のミス。

 私は崖から足を踏み外してしまった。

 運よく友達が私の腕を掴んで助けてくれた。


「おいおいよせよ。このまま素直に引き上げてくれ!」

「この手を離せば、落下して死んでしまうね?」

「止めて、この手を離さないで!」

「君の運命はボクが握っている? 今までの恨み晴らさせて貰うから。昨日、ボクのプリンを食べたの君だよね?」

「何を言っているか分からないよ。私が発見した時には、冷蔵庫は開けっ放しにされてたし、猫の足跡もあったよ?」

「そんなの君の魔法でいくらでも偽造出来る。食べたのは君なんだ!」


 コレは完全に疑いの目だ。言い訳している内に力尽きて、崖下に落っこちてしまう。


「落ち着こうよ。安全な場所で、ゆっくと話そう。そうだ、私の特製プリンを食べながら?」

「そのプリンは、ボクのプリンを複製した物だよね。もう自白したも同然だ」

「くそう。こうなったら魔法であなたの手と私の手をくっつけてやる」

「わ、手が離れない!」

「これで、死ぬ時は一緒よ?」


 突風で逆転して、私が崖の上に飛ばされた。手はくっついたまま。友達は崖の下、今度は友達が命乞いをする番だ。


「フフフよくもやってくれたわね? 今度は、私があなたの命を握っているわ。さあて、どうしてあげましょうか?」

「ごめんなさい。ごめんなさい。さっきのはウソです。ボクは初めから君を助けるつもりでした。だからね? 助けて」

「まずはくっつく手の魔法を解除して……」

「にぎゃ! 手が汗で滑る!」

「あーら滑っちゃった」

「ぎゃー! 助けてー。あぁあぁあぁ……」


 友達は崖の下に消えて行った。


「遊んでないで、そろそろ行くよー」


 一方は身体強化で崖から落ちても死なない。

 一方はフライの魔法で飛べる。

 崖なんて欠けたタイルの段差位の脅威でしかない。


「仲良しでいいな?」

「だってコイツがボクのプリンを食べたんだ!」

「私じゃないって、猫の仕業だって」

「ウチの食べかけのプリンをあげるから仲良くしなよ?」

「あー、そのプリン、ボクのだぞー!」

「安心しなさい、猫が食べる前に、ウチが食べといたから」

「次は、あんたを崖から落としてやる!」

「ウチはヒーラーやから即死でなければ回復出来るわ」


「コラーそこの仲良し3人組。ダンジョン攻略行くぞー!」


「「「ハーイ」」」

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私の手をはなさないで 三雲貴生 @mikumotakao

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