その手をはなさないで

月乃兎姫

第1話

 街中を歩いていると、母親と幼い子供が歩いているのを目にすることがあると思う。一見、微笑ましい光景のように思えるのだが、時にそれは恐怖へと変わることがある。


 それというのも、今の時代スマホは欠かすことのできないインフラとも呼べるものとなり、それは子を持つ母親であっても同じこと。特に年齢が若ければ若いほど、SNSやLINEなどは毎日どころか毎時間のように触れていなければならない。


 そんな光景を街中を歩いているときに、子供と一緒に歩いている母親で目の当たりにすることなる。年端のいかない、2歳、3歳の子供であっても、よたよたと自然に歩けてしまう。親としても、子供の成長は嬉しい反面、少しの自由を得ることになる。



 子供の手を引く……というのは、安全面はもとより、子供が傍に居るという安心感にも繋がるのだが、スマホというのは、絶えずネットに繋がれるため、その手すらも立ち所に断ち切ってしまう。


 それが道路に近しい歩道ならば、その後にあるべき姿は想像にかたくない。「あっ……」と思った瞬間には、既に取り返しのつかない事態となり、母親は自らを罰するのではなく、運悪く引いてしまった相手へと敵意を向ける。

 もちろん、車を運転するということは、免許という名の通り、本来ならば禁止・規制されているものを許可を得、免じられているものであるが、それであっても時に理不尽なことが起こってしまうものなのだ。


 一般的には、「子供は自由である。故に罪はない」という言葉もあるが、それは親が責務を果たす場合でのみ語れるものであり、一切の責任を取らないというのは、相手からみれば、理不尽なこと、この上ないことだろう。


 社会的立場から見れば、人は平等ではない。また平等であるべきでもない。何故なら、そうした物事が日々存在しているからだ。矛盾したことを述べているが、そもそもの社会からして矛盾しているので、平等や矛盾というのは単なる言葉遊びでしかない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

その手をはなさないで 月乃兎姫 @scarlet2200

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ