KAC20245 オウムのかたるくん。彼は見つめ、ただ暴露する。

久遠 れんり

オウムはすべて知っている。

 彼女は、有希。

 名前が、男みたいだと文句を言っている。

 ああ、『ゆき』ではなく『ゆうき』ね。


 少し背は低く、かわいい系で、本人もボーイッシュ系でまとめている。


 付き合いは三年。

 大学に入ってから、一般教養が一緒だった。

 専門は違う。


 まあそんなこんなで、連れと教室でグループナンパ。

「なんて奇遇なんだ。グループの人数が一緒じゃないか。これはもう運命だぁ」

 ロミオとジュリエット風に、そんなことを言ったら、夕方には飲みに行っていた。


 授業中だったが、彼女達は笑い出し、先生に追い出された。


 そこでまあ、先ずは紳士的に、会う回数を積み。押し倒した。

 別の子を。

 だが、何かが合わなかったのか、振られ、落ち込んでいたら、有希に声をかけられた。

 話を聞くと、振った彼女は、有希が俺を気に入っているのを知っていて、抜け駆けをしたそうだ。

 人が良いなと言ったら、とりあえず取るみたいな感じの子らしい。

「普段は良い子なんだけどね」

 有希はそんなことを言うが、とてもそうとは思えない。


「紗菜が言っていたわ。二人だと面白くないって」

「そりゃどうも」

「それで、彼女のこと本気だったの?」

「そりゃまあ、一応ね」

「どんなところが良かったの?」

 そう言って彼女がじっと見つめてくる。


「あーまあ。今更だけど。女の子と付き合うのは初めてで。そう。日々すべては感動で…… よくわかんない」

 そう言うと、彼女はあっけにとられる。


「えっ。その感じで、付き合ったことないの? うそよね」

「いやほんと。高校のときは真面目君で。ほら」

 そう言って、スマホの写真を見せる。


「ほら、これがリンゴメーカーで、こっちが台湾」

「えーと。上条君」

「あっ、裕樹で良いよ」

「えっ」

「そう。君と僕とは同じ名前を持っている。これはもう運命」

 そう言って、空を見上げ大仰に両手を広げる。

 三数えて座る。


「ええと、何だっけ?」

 真顔で聞いてみる。

「高校のときの写真を見せてくると思ったら、スマホの写真を見せられた」

「ああ、そうだね。えーと。高校ねえ。そんな古い写真。見よ残酷だった高校時代の真実」

 ジト目だった、有希の目が変わる。


「やれやれ君も、村田君を紹介してとか、淳也君紹介してかい?」

 そう言うと、彼女は怪訝そうな顔になる。


「これ、全部友人…… なの? これってアイドルグル-プだよね、消された人のファンが怒るわよ」

「あっ、ばれた? この輪郭、解像度が低くてジャギーが出てさ、結局顔だけ差し替えて合成をしたんだ。苦心作」

「へーでもこれ、高校生の時?」

「そう、ネタで作った。本物はこっち」

「え゛っ」

 見せたのは、びしっと七三分けで、黒縁メガネ。

 これもネタ。

 ちょんまげのモノまである。


 多分彼が、他のネタを探しているときに私が思ったこと。

 紗菜と一体どんなデートしたの?


 それが疑問だった。

 そうアイドルに紛れ込ませても、違和感ないし、会話や行動内容もはっちゃけ。

 面白くない? 一体?

 彼女は、つまんないと言うだけで、内容は、全然言ってくれないし。


 そんなことを思っている有希だが、紗菜にはつまらなかった。

 ほぼ無意識だが、事あるごとに、裕樹は有希の事を聞いていた。

 それが積もり、彼女は当てつけのように寝た。


 そして、裕樹は初めてだったために、つい感想を口にする。

「ふーん。こんなモノか。思っていたよりは……」

 そう、それは、寝たふりをした、紗菜の耳に入る。


 そして彼女は、悔しさのあまり、有希に言う。

「あの男。つまんない」

 そんな事実があった。


 そして、付き合うようになって三年。


「うーし。仕事に行ってきます」

「あたしも出るわよ。あっなぜドアを閉めた。あっ鍵まで」

 そんな感じで、仲が良かった。


 だが、しかし。

 裕樹は大学に通い出し、一人暮らしを始めたが、部屋で一人いるのが淋しく。彼は、オウム、キバタンというタイプを飼い始めた。


 オウムは三〇年から五〇年生きる。

 長生きだから、そして賃貸で犬猫は、やはりハードルが高かった。


「おう。ただいま。かたる。有希はまだか?」

「おう。ただいま。ゆうき。んー好き。もっと強く。壊れるくらい突いてぇ」

 当然だが、無表情で語るかたるくん。


「はっ? かたるくん。今のなに?」

 思わず浮気かと疑ったが。

「ゆうき好き。もっと突いてぇ」

 少し呆然と聞いていた。当然、俺の顔はニヤニヤだ。


 そこへ帰ってきた、有希。

 部屋に入ると、聞こえる声。

「もっと奥まで。はげしく」

「えっ」

 見ると、かたるくんが暴露中。

 裕樹が出張で、淋しくて。一人でしていたとき、口走った私の声を……  暴露している。


「いやぁ、

 彼女は叫ぶ。

 だが、かたるくんは語る君。


 ただ、すべてを見つめ。すべてを語る……



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

KAC20245 オウムのかたるくん。彼は見つめ、ただ暴露する。 久遠 れんり @recmiya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ