不思議な物体

白兎

不思議な物体

 オーコーネルは、衛星ラオパスの通信障害の復旧を行っていた。彼の住む惑星にはいくつもの衛星があり、それを利用して、通信を行っていた。

「あれ? このケーブル、何かに齧られたように見えるよ」

 オーコーネルが言うと、他の衛星で同じ作業をしていた仲間が、

『え? そっちも? 実はこっちもそうなんだ。ここには生き物なんていないはずだが?』

 と返って来た。衛星は自然なもので、オーコーネルがいる衛星は、惑星から遠く、直径が三キロメートルと小さなものだった。もはや岩の塊のようなもの。仲間がいる衛星は、惑星に近く、直径は三千キロメートルもあるが、ひとが住める環境ではないため、通信アンテナとそれに付随する施設があるだけだった。

『一体、何がいるんだ?』

 仲間が不思議そうに言う。仲間のいる衛星イリオンは硫黄と二酸化硫黄の霧に包まれていて、生物が生きられる環境ではない。オーコーネルのいるラオパスには有害なガスはないが、ただの岩であるため、有機物もなく、ここでも生物は生きられないはずなのだ。

「何がいるか分からないのは不気味で気にはなるが、俺たちは任された仕事をしよう」

 オーコーネルは仲間に言った。そもそも、人が住めないところでの作業なのだから、さっさと終わらせて帰らなければ、自分の身が危険になるのだ。こんなこと、ロボットにやらせればいいのだが、それらが上手く作動しなかったから、彼らが派遣されたのだった。


『齧られたケーブルは新しいのに交換した。そっちはどうだ?』

 仲間が言うと、

「こっちも、交換は終わった。通信を再開する」

 オーコーネルが言って、スイッチを入れた。無事に復旧したのを確認すると、

「それじゃあ、戻るとするか」

 オーコーネルは小型宇宙船に乗り込み宇宙服を脱ぐと、そこには見た事もない不思議な物体がくっ付いていた。

「なんだこれは!」

 驚いて宇宙服を投げた。銀色の甲虫のようなそれは、こちらを見てこう言った。

「はなさないで」

 と。

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不思議な物体 白兎 @hakuto-i

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