はなさないで ~地雷とネタバレとお寝坊さん~
孤兎葉野 あや
はなさないで ~地雷とネタバレとお寝坊さん~
「ねえねえ、ユキ姉。『シルバースプリット』の最新話は読んだ?」
「もちろん読んだわよ、美園ちゃん。エーリスの危機に、行方不明だったコキエスが救援に現れて大逆転の展開は、本当に熱かったわね。」
「あっ・・・・・・」
「み、美園ちゃん? そういう話がしたいわけじゃなかったのかしら。」
「ごめん、ユキ姉・・・鬱展開かどうかだけ、読む前に聞きたかったの。」
「ええっ! ご、ごめんなさい、美園ちゃん・・・!」
「ううん、私がちゃんと説明しなかったから・・・」
「美園ちゃんの、そこまで話さないでほしかった・・・という顔を思い出すたび、自分に言い聞かせるのよ。人の話は最後まで聞かなければいけないと。」
「・・・・・・ユキ姉。その話、私にも思いっきり流れ弾なんだけど。」
「ご、ごめんね、美園ちゃん。」
「・・・なるほど。こういう顔のことか。」
「何か言いたいことでもあるのかしら? 灯。」
「あわわわわ・・・すみません、ミソノ、ハルカ。私が『この国の学生がよくやるような遊びをしてみたい』などと言ったばかりに、このような・・・」
四人で囲む机の上には、よくあるカードゲーム。一戦目の負けチームへの罰として『恥ずかしかった話』を語り終えた遥流華さん・・・幼馴染の美園にとっては、人前に立つ時の名ではなく本名由来の『ユキ姉』が、頭を抱えている。
「まあまあ、実際にこういう遊びはよくあるんだし、そこまで気にしなくていいよ、ソフィア。」
「ええ、その通りよ。次は負けないけれど。」
「ひっ、ミソノの目が恐いです、アカリ・・・!」
「あはは、ソフィアの精神が保ちそうにないから、罰ゲームはあと1回で終わりにしようか。」「・・・勝ち逃げは何としてでも阻止するわ。」
「ああ、ミソノが魔物を狙う狩人のような表情に・・・」
「・・・というわけで、よくある流れの通りに私達が負けたけど。」
「ううう・・・言い出した私が全て悪いのです。アカリ、何でも構いません。私の恥ずかしい話をしてください。」
「いや、遊びなんだから、そこまで深刻にならなくて良いけど・・・でも、そこまで言うならソフィアの話をしようかな。」
こういう時、私が気を遣ってもソフィアが喜ばないことはよく知っている。それなら、ちょっと自慢話みたいになるけれど・・・・・・
「私が異世界に召喚されて、ソフィアと一緒にいた頃の話だけど、
敵の夜襲があって、それはどうにか退けたものの、回復魔法を使える人達は遅くまで治療に追われた時があったんだ。そうして次の朝・・・」
「あ、アカリ、それは・・・・・・」
「いつもは誰よりも早く起きて、朝食の準備とかしてるソフィアが、私の腕の中に潜り込むように眠っててね。
疲れてるだろうと思って先に起きようとしたら、『行かないでください、アカリ・・・』って寝惚けた声で・・・」
「ああああああ・・・・・・! お、覚えています。その後アカリが優しく起こしてくれて、物凄く恥ずかしかったことを・・・!」
ソフィアが崩れ落ちるようにして、私の胸の中に顔を埋めてくる。
「しばらくの間こうしていてください、アカリ・・・今は皆の顔を見られる気がしません。」
「うんうん、好きなだけこのままでいいよ。美園はこれで満足かな?」
「え、ええ。これで一回ずつ罰ゲームだし、綺麗に終わりで良いと思うけど・・・」
「つまり、先程の話は今のような状況だったのでしょうか。」
「うん、そういうことだね。」
「~~~~!!!」
美園と遥流華さんの声を聞いて、ソフィアがますます強い力で私に抱き付いてくる。
離さないでと口にするような、ぎゅっとした感覚が愛おしくて、ふわりと揺れる金色の髪を優しく撫でた。
はなさないで ~地雷とネタバレとお寝坊さん~ 孤兎葉野 あや @mizumori_aya
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