ゆきしろにべにばら

牧瀬実那

おじょーさんと暮らしてもうすぐ半年になります

 ぼくはヴィー!

 本当はしゅねーびっつぇんっていうんだけど、みんながヴィーって呼ぶからヴィーなんだ。

 今はおじょーさんと一緒に暮らしてるよ!

 おじょーさんは他のヒトからアルテとかろずれーさんって呼ばれてる。ぼくのお母さんやきょうだいはおじょーさんって呼ぶから、ぼくもおじょーさんって呼んでる。

 

 おじょーさんはぼくがすごくちっちゃい頃からいっぱいぼくを良い子良い子して、いっぱい遊んでくれるんだ! だからお母さんやきょうだいが居ない夜も全然平気! それにおじょーさんはぼくを一緒のオフトンに入れてくれるしね。おじょーさんはふわふわでふにふにであったかい。お母さんたちとは全然違うけど、とても良い匂いもして、嗅いでるとなんだかとっても安心するんだ。おじょーさんも、おんなじようなことを言ってた! ……と思う。おじょーさんの言葉は全部わかるワケじゃないけど、そう言いながらぎゅってだきしめてくれたし、うん、きっとそう!


 おじょーさんと街をお散歩するのもすごく楽しい! おじょーさんも一緒に歩いてるとよくわらってて、楽しいって気持ちが伝わってくる。そんなとき、ぼくはおじょーさんの隣で歩けることを誇らしく思うんだ。

 

 まだおじょーさんちとお母さんのところを行ったり来たりしてた頃。

 きょうだいたちと遊ぶ他に、ぼくはいろいろなくんれんをした。他のきょうだいとは違うくんれんで、なんでぼくだけそうするんだろうって不思議だった。お母さんに聞いたら、お母さんは「あなたのお仕事はお嬢さんを助けて歩くことよ」って教えてくれた。

 最初はよくわからなかったけど、おじょーさんと一緒に暮らしてるうちに、なんとなくわかるようになってきた。

 おじょーさんはよく転ぶ。すごくよく転ぶ。ぼくが急に走り出しらあっという間に転ぶし、小さな段差でもつまづいてしまう。「お嬢さんは人間にしてはあんまり目が良くないのよ」とお母さんは言っていた。ぼくらは鼻やひげが利くけど彼女はそうじゃない、とも。

 だからお散歩のとき、ぼくはおじょーさんに気をつけるところを教えることにしたんだ。段差があったら尻尾で叩いて知らせる。馬が来たら止まる。悪そうなヤツが来たら……とりあえず前足とかで踏んでみる。これはお兄ちゃんに教わった方法で、吠えたり噛んだりしなくても結構追い払うことが出来る。あんまり吠えたり噛んだりしちゃいけないって言われてるから、教えてくれたお兄ちゃんには頭が上がらないよ。

 

 そうやってたら、最初はおっかなびっくり歩いていたおじょーさんも、だんだんぼくを信頼して姿勢良くとことこ歩いてくれるようになった。今ではぼくが少し走ってもしっかりついてきてくれる。それが嬉しくて、ついおじょーさんの顔を振り返ってウキウキしちゃう。調子に乗りすぎないようにしないと。

 それから、おじょーさんは「教えるのはりーどをつけるときだけでいいよ」って言ってくれた。つけてないときはぼくの自由にしていいって。本当はほんのちょっとだけさみしいというか、りーどが無くたっておじょーさんの隣で教えてあげたい。だけど、おじょーさんはぼくが遊び回ってても楽しそうだし、お土産を持っていったら喜んでくれるから、最近は遠慮なく走り回ることにしてる。たまにはノンビリするのも悪くないなって思うようになったよ。


 でもね、おじょーさん。その代わりりーどをつけたときはすまーとにおじょーさんを守るから、絶対にりーどをはなさないでねっ! おねがい!

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ゆきしろにべにばら 牧瀬実那 @sorazono

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