16「番外編」
アカシックレコードの管理者は、申し訳なさそうにしていた。
それは、夏也の存在である。
夏也は、転生が多い。
現世で命を全うした後、天国にも地獄にも行かずに、この領域にきた。
夏也は、今のアカシックレコードの管理者を連れて来た神の右腕で、現世がどの様に発展して、変わっていくのかを、どんな時代においても、細かく監視する役割があった。
どんな人間に転生をしても、右腕であるのを隠して生活をしている。
それを知っている管理者は、転生させる夏也を目の前にした。
「転生を受け入れます。」
夏也は、昨日、春樹とアカと話をしたから、未練はなく、転生をうけいれようとしていた。
管理者は、手を夏也の頭に置いた。
「今の名前、夏也。次は、どこに転生をしたいですか?」
「そうですね。貢さんが関わったプロジェクトの行く末を見たいですね。」
「でしたら、今度、天地家に産まれる男の子なんてどうでしょう。プロジェクトを各国が始動させます。」
「わかりました。」
管理者は、天地家に夏也を転生させた。
上げた手を、ゆっくりと下ろした。
「今度の生で、少し安らげますように。」
管理者は、指を絡めて、祈った。
それから、何十年か経ち。
ペアバディシステムが構築された。
地上では、総蔵は頭を抱えていていた。
一人一人にGPSをはめて、管理するだと。
また、このシステムで争いが起きると、想像した。
温水とゆかりは、貢が作ろうとしたシステムは、こんな風なものではない。
管理ではなく、防犯として作っていたのを知っている。
だが、もう、世界中にその機械が順番に配られ始めていた。
止めることが出来ないのか。
世界のルールとなった、システムを受けるしかなかった。
だが、一つの地域から、システムの弱点が分かった。
弱点とするのは、昔からの言い伝えである。
昔からの民謡や踊り、伝統などは、いつも自然と一緒にいた。
自然を神として、とても大切にしていた。
だが、今の世の中は、機械であふれている。
機械が良くないわけではない。
使う人間の気持ちが、機械と共にではなく、支配という気持ちが大きくなっていた。
自然と機械を、人間が使わせてもらってありがたく思う気持ちが大切であった。
支配する気持ちがなければ、良かった。
だが、このシステムは、ある出来事で決着した。
決着する三十年前。
アカシックレコードにて。
「春樹?」
アカが春樹を呼ぶと、少しだけ寂しそうな顔をした。
「アカ、もしもの時は、俺の傍にいなくていい。元、アカシックレコードの管理者として、仕事をして欲しい。きっと、その時が来る。」
「何を。」
「いいから、地上を守れっていっているんだ。」
「春樹がいうなら。」
「頼む。」
春樹は、少しだけ嫌な気配がした。
自分の血管が浮き出ている手を見ると。
「まさかと思うけど、俺の血がどこかで使われた?」
春樹は、自分が亡くなったから、血の能力が無くなったと思った。
しかし、それは違って、何処かで使われたと思った。
悪用されないといいが…と思い、今ある作業をした。
アカは、一度、今の管理者と話しをするのがいいと思い、管理者の元へと向かった。
「それは、私も気づいています。」
管理者は、相変わらず、春樹達が作った服を着ていた。
今日の恰好は、着物だ。
紫色で花と扇の柄をした生地で作られていた。
帯の色は、黄色をしていて、とても華やかである。
動きにくそうにしていると思うが、それは違い、着物の横にはスリットが入っていた。
足は自由に動かせる。
しかし、着物だからか、おしとやかに、椅子に座っていた。
「地上で良からぬことにならなればいいと思います。」
「そうですね。地上にある美術品が、全て無くなる事態は避けたいです。」
「その時には、私も力を貸します。」
「ありがとう。アカ。」
管理人は、アカに手を伸ばすと、アカも管理人に手を伸ばした。
そして、手のひらを合わせ、指を絡める。
両手で祈る形になり。
「地上に平和を。」
祈った。
終わり
天地計画 森林木 桜樹 @skrnmk12
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