黒歴史。真夜中のマーライオン。

久遠 れんり

それは昔の話

 それは大昔。


 若い頃の…… そう本来、封印していた記憶。


 掘り起こすことはないと思ったが、この機会にお詫びをしたいと思う。


 昔、翌日の朝、バスの出発が早いため、集合場所に近い友人の家に前の晩から集まった。

 漫画を読んだりゲームをしたり。

 その頃流行りだした、パーソナルコンピューターを使って遊んでいた。


 そして、若い男達が集まると、始まるのは酒盛り。

 わいわいと楽しく飲んだ。


 なぜか皆が、バッグから酒を出してくる。

 つまみもなく、飲み始めるとピッチも上がる。


 やめれば良いのに、俺の方が強いとか言い出して、そのスピードは上がっていく。


 大体あの頃、バーボンを一本七〇〇ミリリットルを開けると二日酔いになっていた。ただ。そう、あの時は、飲み慣れていない頃だったから、もっと弱かっただろう。


 そして皆が、順に酔い潰れていった。


 そう四畳半くらいの部屋で雑魚寝。


 ――あれは、何時頃だったろう。


 私は気持ち悪くなり、起き上がった。

 だが、その時は、トイレに行く時間もなく、やってしまった。


 盛大に。


 そう、我が口から紡ぎ出される呪いの様に、きらきらが部屋中に噴き出された。


 後はどうなったか? その光景は想像に難くないと思う。

 そうだ。――阿鼻叫喚。


 楽しかった話。その思い出は、一気に黒歴史へとメタモルフォーゼし、語ってはならぬ物語へと、一瞬でその姿を変えた。



 どうだぁ。酒にまつわる逸話は、人それぞれ数あれど、この後に待ち受ける地獄を想像出来るだろうか?


 うーん? 俺の方がもっとすごいだと?

 ならば、晒すがいい。

 この場にすべて曝せ。


 曝せるならば、我はそなたを勇者と呼ぼう。




 えーあの時、被害にあった友人に、この場で陳謝いたします。

 ああ。わざわざ思い出さなくて結構。

 忘れているなら、是非そのままに。封印をお願いいたします。


 最後に。

 酒は適度に楽しみ、人に迷惑を掛けないようにしましょう。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

黒歴史。真夜中のマーライオン。 久遠 れんり @recmiya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ