おおきな『ささくれ』

みょめも

おおきな『ささくれ』

ある日、栄養バランスの偏った食事ばかりしているおじいさんがいました。


来る日も来る日もジャンクフードばかり食べていたおじいさんは、ある日、左手人差し指の先に、おおきな『ささくれ』を見つけました。





ささくれを引っ張って抜こうとするおじいさん。


しかし、おおきな『ささくれ』は、うんともすんとも動きません。





そこでおじいさんは、おばあさんを呼びました。


「一緒に『ささくれ』を抜いてくれないか。」


「ほう、『ささくれ』とな。」


元はといえば、おばあさんが飯を作ってくれないのがいけないのですが、おじいさんはそんなこと言いません。


時代はジェンダーフリーです。





『ささくれ』を引っ張るおじいさん。


それを引っ張るおばあさん。


まだまだ『ささくれ』は抜けません。





おじいさんは次に孫を呼びました。


孫はhamburgerをcokeで流し込みながらやってきました。


元はといえば、孫がジャンクフードの美味しさを教えたから、おじいさんはジャンクフードの虜になってしまったのですが、おじいさんはそんなこと言いません。


子は社会の宝です。





『ささくれ』を引っ張るおじいさん。


それを引っ張るおばあさん。


それを引っ張る孫。


まだまだ『ささくれ』は抜けません。





おじいさんは次に犬を連れてきました。


貧しい家庭で犬なんて飼う余裕はないのに、おじいさんの許可なく、いつの間にか住み着いたのですが、おじいさんはそんなこと言いません。


動物を飼うのは人間のエゴだと言う声が聞こえてきます。





『ささくれ』を引っ張るおじいさん。


それを引っ張るおばあさん。


それを引っ張る孫。


それを引っ張る犬。


まだまだ『ささくれ』は抜けません。





おじいさんは次に猫を連れてきました。


猫が爪研ぎをするせいで、家柱は傷だらけでしたが、おじいさんはそんなこと言いません。


爪が伸びるのは猫の生理現象です。





『ささくれ』を引っ張るおじいさん。


それを引っ張るおばあさん。


それを引っ張る孫。


それを引っ張る犬。


それを引っ張る猫。


まだまだ『ささくれ』は抜けません。





おじいさんは次に鼠を連れてきました。


鼠はおじいさんが楽しみにとっておいたチーズを勝手に食べていましたが、おじいさんはそんなこと言いません。


チーズに名前を書いておかなかった自分が悪いのです。





『ささくれ』を引っ張るおじいさん。


それを引っ張るおばあさん。


それを引っ張る孫。


それを引っ張る犬。


それを引っ張る猫。


それを引っ張る鼠。


と、そのときです。


メリメリと音を立てて『ささくれ』は指先から指先、手背までめくれあがり、抜けました。


「痛ててててて!」


痛がるおじいさんを尻目にみんなは大喜びです。


みんなに手伝いをしてほしいが為に、言いたいことも我慢していたおじいさんは、心がたいそう『ささくれ』立ったのだとか。

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